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2006年10月31日 (火)

CD 『スティーヴ・ライヒ ベスト』

 世界文化賞を受賞したスティーヴ・ライヒさんのベストCDを聞いていると、“前のり”というか、心急かされる感覚が起こります。

 彼の作品はミニマル・ミュージックと呼ばれ、その後のトランス・ミュージックに影響を与えました。それは短いテーマが繰り返し、複雑なリズムの交錯と、半端拍子が先送り感を作っていく独特の音楽です。『ゴジラのテーマ』を複雑にしていったものをイメージするとわかりやすいかもしれません。

 私は施術の中盤までは清明などという心境とは程遠く、様々な情報が飛び交い“UNCONTROLLABLE”で不整脈な、パニック寸前にあるように感じることがあります。

 それはクライアントの体の混乱を受け入れる作業をしているからであると思うのですが、『ライヒ ベスト』を聴いていると、その感覚が再現され、何故か落ち着きます。「乗り越えるべき壁に向かう」混乱した心地よさの感覚を、70才の彼が遥か昔から作品にしていたことは、とても心強く思いました。

 会話のイントネイションを譜面に起こしてアンサンブルにしてしまう手法も、その会話自体にストーリー性がある芸術的な完成度の高さも、今までに体験してこなかったジャンルの音楽に出会えた喜びとなりました。

 このCDを聴いていると、難しい音楽であるからなのか、よく眠れるのです。マッサージ用ヒーリング・ミュージックにならないかと思って買ったのですが、一般的には“NO”、しかし冒険的に使ってみると“YES”なのかもしれないと思います。

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2006年10月30日 (月)

大橋マキ著『セラピストという生き方』

 元フジテレビアナウンサーでアロマセラピストの大橋マキさんが、雑誌『セラピスト』のインタビュー連載をまとめた『セラピストという生き方』(BABジャパン出版局)という本を読みました。

 10人の様々な療法を行うセラピストとのやりとりが、素直な感性溢れる表現で再現されています。

 特に施術の体験リポートは、その良さ、面白さがわかりやすく伝わってきて、大橋さんがニュートラルな立場で取材のできる優れたジャーナリストであることがわかります。

 グルメ・リポートとは違い、一日にいくつもの施術を体験することは決して褒められるものではないし、その良さを共通の感覚に近い言葉に置き換えることはとても困難なことです。

 しかし大橋さんはアロマセラピストとしての知識も実践も持ちながら、純粋な好奇心に突き動かされて、絶妙のスタンスで10人のセラピストの懐に溶け込んでいきます。

 それも実はセラピストとしての才能なのかなと思いました。様々なセラピーをニュートラルな立場で伝えることができるリポーターのニーズはあると思っていましたが、その適任者が初めて現れたような気がします。

 10人のセラピストの手技や療法はそれぞれ個性的なのですが、「体から心を見る・体への刺激が心に変化を与える」ということは共通しているように思いました。

 『まだ道の途中にある感覚はセラピストなら誰もが持っているようです。お勧めの一冊です。

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2006年10月29日 (日)

自分の健康観を常に更新し、特異なものであってはならない。

 今日はピアニストの小指の腱鞘炎を何とか良くしなければなりません。

 長年の演奏で、小指の腱は肥厚し炎症を持ちました。彼女の小指はベテランのアスリートなのです。

 「ステロイドの注射に不安がある」と言うのですが、私はコンサートを控えたピアニストの腱鞘炎を早く治すのであれば、休めることと、冷やすことと、ステロイドの選択もあると思います。

 注射後むくんだことで不安になったようですが、それがステロイドの副作用だとしてもコンサートをするのであれば、まず炎症を緩和しなければなりません。

 アロマテラピーと東洋医学の端っこにぶら下がらせていただいてはいますが、それが信仰のようになってしまうことには危惧を感じています。

 もちろん、プラシーボ効果もあり、たとえ自分が治した確信はないことでも、そう言っていただけるのであれば、あえて否定してマイナスイメージを植えつける必要もないと思っています。

 「気が出てる」と言われたり「見通す力がある」と言われることは、ありがたくお褒めの言葉として受けとめますが、今の医学と照らし合わせて奇異な方向に先導してはいけないと思います。

 リハビリ法、マッサージ法を覚えてもらい、治す方向に最適な協力ができるかということが施術とともに大事です。

 「むくみはこちらで何とかできますから」と言っておきましたが、彼女は2回目のステロイド注射をしているでしょうか?その健康観を無理やり変えることもできないのですが、不安を減らして影響を与えることはできると思っています。

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2006年10月28日 (土)

足で顔を踏むな!

 ちょうど一週間前の深夜、タレントさんの頬を足で踏んで、頚を回旋させているエステ?をテレビで見ました。事前の十分な問診と頚部の筋肉をほぐす手技などは放送されていませんでしたが、あったのでしょうか?

 椎骨動脈は頚の回旋時に過伸張され、横突起や頚部の筋肉によって圧迫されています。美学の面からも足で顔を踏むのはどうかと思いますが、危険です。

 「だいたいオッケイ」とか「みんなやっているから」とかではなく、人間の体はひとりひとり特別なものだと思わないかぎり、美肌にどうとかいう能書きは愚かにしか聞こえません。

 想像力の問題なのです。リラックスが欲しい体に、ロメロ・スペシャル(古いプロレス技です)も、マウント・ポジションもストンピングもいらない。蝶野さんの喧嘩キックを久々に見たようなエステでした。

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2006年10月27日 (金)

とても硬いエレベーターのボタンを押す時の指

 指圧をして指が痛くなる人は、指の力で圧しているので被術者にも痛い思いをさせています。

 とても硬くて押しにくいエレベータのボタンがあったとします。人差し指で押すとして、普通は指を立てたまま(指の付け根の中手指節関節伸展)で押すことができますが、とても硬いボタンを押しこむためは、指の付け根を少し曲げることで、上肢を一本の棒のようにして体重を利用して押すことになります。

 これならば強い圧をかけることができる上、体重のかけ方によって刺激の調節をすることができます。母指で圧す時も中手指節関節の屈曲がなければ、調節のできないがむしゃらな指の力になってしまうので、攻撃的で不愉快な刺激になります。

 残りの四指も中手指節関節を屈曲させることで、より安定した体重移動が可能になります。圧す母指の上に反対側の母指を重ねる“重ね母指圧”では、上の母指は安定のために添えておくだけです。

 上の母指で下の母指を圧すと別の力が加わるので安定した垂直圧にはなりにくいと思っています。この間違った圧し方をすると、母指の爪が変形してしまいます。母指の爪が変形している施術者は、技量を疑われても仕方がありません。

 人差し指でとても硬いエレベータのボタンを押すときの指、床や机に片手の指の指紋部をついて立ち上がる時の指、これが指圧の指の使い方で、添える側の手は圧を安定させ、母指の深い一点圧、垂直圧を得るためにあります。

 ただし、母指圧を安定させるための残りの指の指紋部にも、広範囲に軽圧をしていくという治療効果があることを軽く見てはいけないと思います。

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2006年10月26日 (木)

昨日の『ためしてガッテン』のリラックス法

 NHK『ためしてガッテン』は“イタ気持ちよい”の弊害を始めて紹介した番組として好感を持って見ています。

 当然、筋紡錘と筋肉の緊張の関係に及ぶわけで、昨日の放送でも取り上げられていました。

 番組の中でヨガの先生がやっていた、息を吐きながら筋肉を痛くないように伸ばすということが持続的伸張(静的ストレッチ)の基本になっています。これが腱紡錘を刺激して筋肉が緩むということまで触れていなかったのは少し残念です。

 また、最後のリラックス法は家庭でできるバイオフィードバック法として紹介されていましたが、自律神経訓練法とも呼ばれていることの説明があってもよかったかなと思いました。

 岩盤浴の本当の効能から始まり、マッサージ屋さんを映し出すその言いたいところの本音は、よくわかります。よくぞやってくれたと言ってもいい。

 体の声を落ち着いて聴いてみると訴えてくるものがあります。安らぎたい時の体は、激しいものを望んではいない、本当に体をリラックスさせるためのアプローチは、強く主張するものである必要はないと思っています。

 地に足をしっかりと踏ん張った余程のヒネクレ者が番組のブレーンにいるはずです。どんな人かちょっと知りたい気がします。

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2006年10月25日 (水)

自分のフォームをチェックする

 指圧でもマッサージでも皮膚と手指の接触面が広いことが、刺激を安定させます。そのためにはできるだけスタンスもクライアントの体に近づけることが基本です。

 指圧で難しいと思っている圧し方に、伏臥位の肩甲間部一点目があります。肩上部に向かって下るカーブに対して垂直圧をしていくには、母指の指紋部を斜め下方向に圧がかかるように皮膚に密着させることが必要です。

 指圧は圧す方向に体重を移動させることで刺激していくので、肘を伸ばして斜め下方向への体重移動ができるスタンスを固定しなければなりません。

 この部位は脊柱と肩甲骨に挟まれているため、母指を脊柱起立筋と平行に使います。左足をヘッドポジションに出して、爪先をやや内側にひねり、上体をねじることで斜め下方向への安定した圧を得るというような方法を教わってきました。

 しかし、これはなかなか自分の感覚にマッチさせることは難しく、やってみると力の入った圧になってしまい、後で全身の筋肉が疲れてしまうことがあります。

 深い圧をかけるには、母指を皮膚に密着させてから四指を手前に引いてくることによって、てこの応用で圧をかけていけばよいので、未だに肩甲間部の1点目に対してはフォームの試行錯誤が続いています。

 それは野球のバッターにも似て、ヒットにはなったとしても納得のいかないスイングには絶えず工夫が必要なのだと思います。自分のタッチをより良いものにするには、自分のフォーム、自分のスタンスを微調整し続けていくことになります。自分のその日の柔軟性によって、クライアントの体型の違いによって。

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2006年10月24日 (火)

不感温度(33~35℃)の鎮静作用

  38~40℃の入浴では毛細血管が拡張し、血流が増加して筋緊張と疼痛が軽減されるとされ、ぬるい温度の入浴は浸透してきているように思います。

 しかし、水の浮力と温熱を利用した水治療には、体が温かくも冷たくも感じない33~35℃の不感温度入浴があり、鎮静作用と筋の弛緩作用があるのですが、こちらのほうはなかなかお目にかかることができません。

 日本人の「肩まで浸かって100数えて出る」入浴習慣からすると、効果があったとしても不感温度の入浴はかなりの練習が必要だと思います。

 指圧やマッサージの時の眠りは、不感温度のお湯に包まれているように全身が調整されるから起きるのではないかと感じています。

 体の深部体温は約37℃ですが、今の季節、末梢では10℃近く温度差がある人も多いと思います。私の手は施術の中盤くらいから38℃、いやもっと高い体温を放熱しているようにも感じますが、施術中眠る人は、体が温かくなってからほんのわずかに体温が下がった状態にあると思います。

 手の温度はもっと高いのですが、施術を終えた体の部分は不感温度に包まれていような状態を作り出していくのではないかと考えています。全身性の施術をすると、体の程好い包まれ感から胎内感覚を取り戻し、筋肉が緩んでおだやかな気持ちになるのだと思います。

 不感温度の入浴も睡眠障害には効果があるはずです。でもそのぬるさの効果を実感するのに練習が必要だとしたら、包み込むようなタッチを受けてみると不感温度の感覚がわかるはずです。

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2006年10月23日 (月)

満員電車の不快な理由・体臭の忌避物質と限界逃走距離

 今日の産経新聞に解剖学者・養老猛司先生が『満員電車が不快な理由』について書かれていて、アロマテラピーにも関係していることだと納得できました。

 アロマテラピーでは、イネ科のシトロネラやフトモモ科のレモンユーカリなどのシトロネラールを含む香りに、防虫作用・忌避作用があることが知られています。

 またこの逆に、子孫を残し受粉を助けてもらうため、植物の中には虫を引き寄せる誘因作用のある成分を含む香りを出すものもあります。

 人間の体臭も、アポクリン汗腺からの適度な臭いは異性を惹きつけるフェロモンとして働き、それが過剰であればワキガなどの悪臭になります。

 養老先生のお話では、動物には“限界逃走距離”があり、それを超えて自分のテリトリーに侵入されると、動物は逃げるか、襲いかかるのだそうです。だから体臭には自分のテリトリーを示す役割もあるということなのです。

 満員電車で限界逃走距離を超えてギュウギュウと押しあう人間の体からは、過剰な体臭が分泌されます。それで満員電車は悪臭に満ち、逃げたくても逃げられないかといって襲いかかることもできないという大変なジレンマを抱えることになり不快なのだそうです。

 「満員電車は動物ならとても辛抱できない」とも養老先生は書かれていました。納得するとともに、満員、行列、混雑はストレスの元凶なんだと思いました。満員電車の解消は難しいと思います。できるなら避けることが賢明です。

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2006年10月22日 (日)

パワーヨガ・保科直美さんの“声”

 テレビで『安眠ヨガ』を見たのですが、保科直美さんの声を聞いているだけで眠くなりました。

 声のトーンに、秀でたヒーラーであることを感じます。BGMの選曲とそのボリュームにも、“音の癒し効果”を大事にした演出のセンスを感じました。

 ヨガのポーズも、ストレッチポールなどで自分の体重を利用して時間をかけて骨格を矯正していく、無理のない方法です。

 私は背骨や骨盤の矯正を仰臥位でしていましたが、ストレッチポールを使った伏臥位の矯正はお年寄りでも自分でできそうで参考になりました。

 おそらく上級者用には素晴らしいプログラムが用意されていることと思います。恵比寿にスタジオがあり、DVDも出ているそうです。インターネットで検索したところ、とても活躍されている方だということを知りました。

 保科さんの“声”の、柔らかく静かで明確な力は、努力の積み重ねで作り上げられたものだと思います。久しぶりに『寧静』という言葉を思い出しました。ヒーラーと呼ばれる人たちが持つ魅きつけるものを、声のトーンだけで感じてしまいました。発声から癒されるということ、もっと考えていきたいと思います。

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2006年10月21日 (土)

『時間は夢を裏切らない…』

 松本零士先生の『時間は夢を裏切らない…』というフレーズと、槇原敬之さんの『夢は時間を裏切らない…』というフレーズの違いをずっと考えていました。

 『時間は夢を裏切らない…』という文では、“裏切られやすいもの”は“夢”であるという誰もが経験する挫折を前提にしています。

 “夢は実現し難いものである”がしかし、「長い間持ち続けた“夢”は、その“かかった時間だけ”実現に近づいていく」という松本先生の経験に基づいた前向きのメッセージが感じられます。

 一方、『夢は時間を裏切らない…』とすると、“裏切られやすいもの=時間”という前提から始まるので、時間の持つマイナスイメージを探すと「人生の時間には限りがある」「時が情熱を色褪せさせる」などがあり、「夢は人生の限られた時間の中で必ず実現する」または「夢は時間がたっても色褪せることはない」など、かなりスパルタンなハートの持ち主でない限り、超えられそうにない高いハードルになってしまいます。

 松本先生がひっかかったのは、自分のメッセージが違った意味にとられてしまいそうなことだったのではないかと思います。メロディにのせるには3字・4字と区切ったほうが自然なので、槇原さんも頭の中にあったのは、松本先生と同じ気持ちなのかもしれません。

 どうしてこのフレーズが気になったのか考えると、それは私の毎日が“時間を売る”のではなく、“夢を売る”仕事だと(生意気にも)思っているからです。

 体が楽になって気持ちがいいだけでなく、蘇えっていただきたいと思っています。自分で書いても“夢のようなこと”だと思います。ですが、『おかげさまで、店をたたんで故郷に帰るのはもう少し先にすることにしました』などと言われてしまうと“夢のようだな”“私はいつのまにそんなことをやらかしていたのだ”とびっくりします。

 今日は『重症の糖尿病を何とかしてください』という方に初めて指圧をします。ハードルは自分の知らないところで高くなっていきます。

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2006年10月20日 (金)

武道館のステージで歌えるようにする

 日曜日に武道館で歌うのだそうです。ステージに立てる体に調整しなければなりません。

 食欲がなくて2kg痩せたというふくらはぎは細くなっていました。右肩は脱臼しているように伸びています。背中は丸くなり、疲れが溜まって足がほてると言います。

 筋力が弱くなったことと、部分的には使いすぎのコリで肩関節が不安定になっています。背中が硬くなり、腹圧がかからず胃腸が下垂し、消化機能は衰えていると思われます。

 足のほてりは坐骨神経によるもの、腰から臀部・下肢にかけてほぐす必要があります。特に足関節に運動をさせると、骨のぶつかるクリック音がします。

 横臥位・伏臥位の指圧で背部から下肢にかけて筋肉と骨格の調整をしていきます。疲労回復のためには、無理な矯正をする必要ありません。今日できる範囲のマイルドな調整のほうが、自分の中にある治そうとする力(自然治癒力)を引き出すことができます。

 最後に仰臥位で胃腸の位置を調整します。施術後、足のほてりはなくなったそうで、背中が伸びて肩の位置は安定しました。

 彼女は大正生まれ、最年長の部で民謡を歌います。右肩の不安定さは広い畑の落花生をひとりで刈り取ったため。下腿の筋肉の衰えをカバーするために、家で、立位で壁に手をついて踵の上げ下げを無理のない程度にしてもらうことにしました。

 あとは彼女自身の中にいるヒーラーが体を調整してくれるはずです。うらやましいなぁ、武道館のステージに立てるなんて。いくつになってもサプライズはあるのだとワクワクしてきました。“最後まで歌いきれますように”と祈っています。その“祈りの一圧し”が何かを良い方向に変えるために必要だと信じて疑わない私ですから。

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2006年10月19日 (木)

筋肉の断裂を疑う場合

 腰痛や背部痛の中には、筋肉が裂けていると感じる場合があります。

 その特徴は、急性の突発的な痛みで、皮膚の表面に触れただけでは痛みはなく、圧をかけてしばらくして強い痛みを感じるような場合です。

 神経根症状の場合は、皮膚に触れただけで神経の皮膚分節の中に痛みがあります(コンマ何秒という違いではありますが)。

 問診で、痛みが発生した時にギックリ腰でみられるような“息が止まる”感じがあったということであれば、筋肉が裂けている可能性を念頭において押圧は慎重に行わなければなりません。

 靭帯や骨や椎間板の異常と筋肉の断裂との違いは、傷口全体を覆うように押圧できれば、痛みが出にくいということがあります。また、筋線維の走行に沿って縦に裂けるので、縦方向のストレッチでは痛みが出にくいということもあります。

 注意する点は、傷口を広げてしまうサークリングのような柔捏をしないということです。オイルを使っていれば問題はないかというと、傷の中心で次の手技に移行するような場合はやはり傷を広げてしまいます。

 唯一安全な方法は、誘導作用を利用して断裂した筋肉の周囲をほぐすことによって、傷の修復を促すということです。それには全身の施術が効果的なのは言うまでもありません。皮膚の修復作用があり、鎮静・鎮痛効果のあるラベンダーを使ったアロマオイルマッサージも良いと思います。

 ギックリ腰のように腰背部が棒のように固まってしまった感じを持つ痛みでは、基本的には安静が必要です。そしてこの中には筋肉の断裂が疑われる場合もあります。

 昨日、重いものを担ぐ仕事の疲労が重なり、左肩甲間部の脊柱起立筋が断裂したと思える方に、誘導的な全身指圧をしました。発症後4日ほどたっていて傷がくっついてきているような感触もあり、施術後はかなり楽になったと言って帰っていかれました。

 できれば、発症後3日までは安静にしておくのがベストだと思います。どうしても施術をする場合は、傷口を避けて誘導的な全身施術をするしかないと思います。

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2006年10月18日 (水)

膝蓋腱反射からわかるタッチのこつ

 脚気の検査として知られる膝蓋腱反射は、曲げて床から浮かした膝のお皿のすぐ下をハンマーで叩き、膝が上がる(伸展する)かどうかを診ます。

 ハンマーで叩かれた膝蓋腱は、瞬間的に引き伸ばされることになります。膝蓋腱は大腿四頭筋の末端なので、急激に伸張された反射として筋肉を収縮させるため、大腿四頭筋の働きである膝の伸展(下腿の伸展)が起こり曲げていた膝が上がります。これを伸張反射とよびます。

 このことからわかるのは、急激で侵害的なタッチは筋肉を瞬間的に引き伸ばし、その反射として筋肉を硬く収縮させてしまうということです。

 逆に、筋肉に持続的なストレッチングをすると、それ以上は引き伸ばされまいとして、筋肉は緩みます。

 痛みをとめる場合も、触圧覚の太い神経が速く伝達されて後からくる痛覚の細い神経の伝達を遮断するため、軽い圧刺激で十分に痛みをとめることができます(ゲート・コントロール説)。

 これらのことからも、硬くなった筋肉を緩めるのであれば、急激な刺激や強い刺激はいらないということがわかります。皮膚に触れるまで、皮膚から離れていく時、漸増漸減圧、つまりクレッシエンド→デクレッシェンドの感覚がタッチのこつであると言えます。

 ちなみに、腰椎椎間板ヘルニアなどで大腿四頭筋の支配神経である第2腰神経から第4腰神経の神経根症状がある場合は膝蓋腱反射は減弱し、脚気では膝蓋腱反射は亢進から減弱に移行します。

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2006年10月17日 (火)

足背部の指圧が求心性であること

 浪越の基本指圧では、足背部の指圧が求心性になっています。せっかく鼡径部から遠心性に末梢に向かってきたのに、あとちょっとのところで求心性に戻るのは何だかおかしな感じです。

 このことについて明確な理由を聞いたことはありませんが、実際に足首の前から足指に向かって遠心性に指圧していくと、足指を反対側の手掌で包んでいても、足が底屈することになって圧が逃げる感じになります。

 逆に足指の付け根から中足骨を求心性に圧していくと、中足骨間の溝を広げていくことになり、足の甲のストレッチをすることになります。

 おそらく基本指圧をまとめる段階でいろいろと試して、足背部の指圧を求心性にしたのだと思います。「そのほうが気持ちいいから」という理由だったかもしれません。

 足の冷えには足背動脈弓を遠心性にたどっていくほうが理にかなっていると思うのですが、始めから底屈を余儀なくされる足首方向から足指に向かうよりは、求心性のほうが安定した圧とストレッチ効果を得られることは確かです。

 浪越の指圧の特長は、フレキシブルなところにもあります。今は亡き先生はきっと「好きなほうでいいよ。気持ちがいいほうで。」と仰るのではないかと思います。

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2006年10月16日 (月)

ゆるめ過ぎてしまった!

 “過ぎたるは猶及ばざるが如し”つまり、やり過ぎは適量刺激ではないのです。強い刺激でなくても、必要以上に時間をかけた施術は体にとって負担になります。

 筋肉、筋膜、骨と癒着した感じで、全身が疲労で硬く収縮している30代の女性に、全身指圧をしました。食後あまり時間がたっていないというので、仰臥位で左下肢から指圧を始めたのですが、下肢から上肢に移るとすでに眠っていました。

 顔・頭・前胸部・腹部と指圧し、一度起きてもらって、伏臥位で後頭部・頚部・腰背部・臀部・下肢の指圧をしました。この時もかなり深い眠りであったと思います。

 頚の調整ができていないので、横臥位で前頚部から頚を指圧し、もう一度腰背部の指圧をしました。この時点では背筋の硬さもあり、通常ならとれないこりは残して終わるところです(やり過ぎは筋肉を傷めます)。

 しかし、足と下腿外側の硬さが気になったので、アロマオイルマッサージをしました。これが余計でした。どちらかといえば足は温かく、すでに血管は十分に拡張されていたのです。

 また、スイートアーモンドに希釈したスイートマジョラムとスイートオレンジ同量1%のオイルが残っていたため、それを使ったのもよくなかったと思います。さほど影響はないだろうと思ったのですが、これは冷え性とPMS(月経前緊張症)のブレンド、効き過ぎました。

 仰臥位で足と下腿だけのマッサージをしたのですが、ここで三度目の、これまでで一番深い眠りに入ってしまったのも、ゆるめ過ぎる結果となってしまいました。

 普段緊張している体をゆるめ過ぎると、のぼせたり、偏頭痛が起きることがあります。特にPMSがある女性の生理前には、指圧・マッサージは血行を促進し、出血を促す傾向があります。

 目が覚めた御本人は、「いつもと違う。血が頭まで行き渡っている感じ。」と思っているようですが、そのあとに「鼻血が出そう。」と言ったのは、明らかにのぼせです。

 調子に乗ってゆるめ過ぎました。三回目の眠りは阻止するべきでした。あそこで冷え性のオイルは無かったよなと思います。反省しております。

 

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2006年10月15日 (日)

16才と80才が擦れ違う坂道

 指圧を終えた16才の女の子が自転車でゆるい坂道を軽快に走り下り、80才の御婦人がゆっくりと坂道を歩いて指圧に来ただけのことですが、擦れ違う時の風に、振り返ったかもしれない老婦人の姿に、人生の縮図を見るような気がしました。 

 「今擦れ違った若い方は、私の前に指圧に来た方でしょう?」と少し小さくなってきたかなと思える高齢の御婦人がおっしゃいました。

 “どうしてわかりました?”という言葉を私は呑み込みました。前の女の子が帰ってからしばらく時間がたっていたのです。

 ゆっくりと、ゆっくりと、坂道を歩いてくる御婦人は、たぶん随分下のほうで女の子の自転車と擦れ違っているはずです。

 “指圧が終わった人の顔は輝いているのでわかりましたか?”この言葉も口には出さずに指圧を始めると、すぐに眠りの世界に入っていかれました。

 さっきまで16才の女の子が眠っていたマットの上で、今80才が寝息を立てています。その前は50代で膝が痛い女性、その前は60代で頚が痛い女性でした。

 ゆるい坂道を軽快に下る16才と、ゆるい坂道を一歩一歩上る80才が交差するシーンを想像すると、一瞬で人生を過ごししまったような不思議な感じがしました。

 「頭が痛くなるほど肩がこってきたから」と指圧で良くなることを知っていて来てくれる女子校生と、健康維持のために月に一回は指圧に来てくださる80才の女性。

 そのふたりがただ坂道で擦れ違った、それだけのことなのですが、私の頭の中ではそのシーンのイメージがとても広がっています。

 

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2006年10月14日 (土)

「2回の指圧でウエストにくびれができました」

 3回目の指圧に来た方に「ウエストにくびれができて驚きました」と言われました。疲労回復を目的に指圧に来た方なので、特にウエストをしぼる手技を繰り返した訳ではありません。

 全身指圧により血液循環が促進され、脂肪やむくみの代謝も促進されたのだと思います。

 指圧という手技とスリミングは結びつかないように思う方が多いと思いますが、エステの手技はほとんど指圧の中に含まれています。

 ただし、指圧はウエストをしぼることに集中して施術をすることはほとんどありません。ふくらはぎのむくみや小顔にするフェイシャルの手技も全身指圧の施術の中に含まれているのです。

 ですから、ウエストが2cm細くなったとか、体脂肪率が1%落ちたというようなことは血液循環を正常化する手技を全身性に行えば当たり前のことだと考えています

 それよりも気をつけたいのは、ウエストだけをしぼる施術をした場合には、体の恒常性を保つために元に戻ろうとして他の部位からウエストに、溢れた組織液や老廃物が流れてきたり、脂肪をためることです。

 運動不足であったり、体のメンテナンスをしてこなかった方に全身指圧をすると劇的な効果が訪れることはよくあることです。

 しかし、その後はあまり大きな変化があるよりも、体が気づかない程度に良い方向に一緒に向かっていくのがセラピストとしてベターな方法だと思います。

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2006年10月13日 (金)

“膝カックン”でわかること

 イタズラで、立っている人の膝を後ろから押す“膝カックン(そういう呼称ではないかもしれませんが)”をすると膝が曲がるのは、大腿四頭筋が働いていないからです。

 大腿四頭筋は膝関節(下腿)を伸展させる筋肉ですが、直立姿勢のときは膝の外側の腸脛靭帯が働いています。外側に倒れるのを防ぐために大腿の外側が緊張することになれば、大腿の内転筋群は緩み、股関節は外旋します。

 つまり、立っているだけで意識して膝関節を伸ばす運動をしなければ人間の体はO脚気味になり、膝の内側を痛めやすくなるということです。

 サッカー選手や競輪選手の大腿が発達するのは、膝を曲げて伸ばすという力強い運動を反復するからです。エレベーターやエスカレーターを階段に変えると大腿四頭筋を鍛えることになります。

 寝ている時に事故に遭う確立とウォーキングで事故に遭う確立は同じくらい少ないそうです。人間が立っているだけでは“膝カックン”にも負けてしまうということは、膝関節をしっかりと伸ばして歩きましょうということだと思います。少なくとも歩いていて“膝カックン”をされることは、まずありませんから。

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2006年10月12日 (木)

セラピストの手は第三の心臓である

 クライアント自身の足(この場合は下肢全体を指すと考えています)が第二の心臓であるならば、セラピストの手はクライアントの第三の心臓です。

 人間の体は、心臓のポンプ作用を筋肉が補い、末端の足と下腿・大腿の大きな筋肉を使うことによって、血液の心臓への還流が促されます。

 指圧やあんまの遠心性・動脈性とマッサージの求心性・リンパ行性(静脈性)の違いはありますが、指圧・あんまは末端の動静脈吻合で求心性に、マッサージは心臓で遠心性に、血液の流れを促進します。

 ですからどんな手技を使うにしても、セラピストはクライアントの脈拍や呼吸と連動した血行を補うタッチをしているのだと意識してほしいと思います。

 呼吸を止めさせてしまうような刺激や緊張させてしまうようなことがあっては、どんなテクニックを持っていても手技の効果を相殺してしまいます。

 セラピストのタッチが心臓を補い共に血流を促進するものであれば、それはセラピストの手がクライアントの体の一部となり、共感のある時間を作り出しているということです。

 セラピストの手を第三の心臓と考えると、体の隅々まで血液を送るために、やはり全身性の施術をすることが必要だと考えます。

 『息の根を止める』という言葉がありますが、その逆をやることが体のためになる手技療法であると考えれば、急激な刺激や強烈な刺激や急所を攻めるような局所的な刺激は必要がないことがわかります。

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2006年10月11日 (水)

便秘の指圧

 先日頑固な便秘の方に指圧をしたところ、翌日はお通じがあったそうで、しばらく便秘薬をやめているというお話を、次回の予約をいただい電話でうかがいました。

 このケースは指圧中にグーッという胃腸が動く音がなかったので、なかなか難しい便秘であると思いました。

 内臓が下垂して下腹部に腸が集まり、手掌の押圧で痛みがあります。S状結腸に硬さは感じられないのですが、腹部全体に膨満感があります。便は小さいウサギの糞状ということで、腸壁に宿便が張り付いていることが考えられます。

 便秘臭の口臭があることも、この便秘を改善するには時間がかかることと思いました。

 指圧のポイントは第4・5腰椎間の“大腸兪”を含む腰部脊柱起立筋、手関節掌側で尺側の“神門”、上肢外側橈側の“合谷”から“曲池”までの大腸経などがあげられますが、やはり肝心なことは全身指圧をすることです。

 特に腹部の手掌圧を位置をずらさずに、腹式呼吸に合わせて軽圧で持続することが重要であると考えています。私はこの時、腹式呼吸と手掌圧によって自然と内臓の位置が調整されていくことを待つという気持ちでいます。

 技術のあるセラピストほど、巧みな手の動きで施術をしていきますが、混乱した体には、クライアントがセラピストの刺激を受け入れる時間がかかると思っています。

 手掌圧で痛みがなくなれば、徐々に深く“のの字”の母指圧をしていくのですが、これも軽圧と持続ということがポイントです。

 頑固な便秘には食生活も運動もストレス管理も必要です。クライアントに合わせた現実的な努力目標を設定することも、とても難しい課題となります。

 

 

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2006年10月10日 (火)

「膝の水を抜くと癖になりますか?」と聞かれて

 膝痛の方に「膝の水を抜くと癖になりますか?」という質問をされました。答えは大腿四頭筋の強化運動をしていくという条件でNOです。

 整形外科で治療を受けながら指圧・マッサージに来る動機は、「このままではずっと膝に痛みを抱えて水が溜まったままなのではないか」という不安だと思います。

 誰かに言われて“膝の水を抜くことが体に悪い”という不安を持ってしまったようですが、“一度水を抜くとずっと水を抜きつづけなければならなくなる”ということではなく、水を抜いて膝を動かしやすくなったら、機能回復のための運動こそが必要なのです。それをしなければ炎症反応としてまた膝に水が溜まります。

 加齢による膝痛の原因は、磨り減った軟骨が剥がれて滑膜を刺激することによる場合が多く、主に内側に痛みが生じます。

 膝の内側の軟骨が磨り減る原因は大腿四頭筋が弱くなり、膝の伸展が不十分でO脚気味になることがあげられます。大腿四頭筋を下肢伸展挙上運動で強化すると、内側に偏っていた体重の付加がバランスよく分散されるとともに、滑膜を刺激する軟骨の排出や血液循環の促進により膝の水の排出を促します。

 そして大腿四頭筋の強化運動とともに、しっかりと膝を伸ばして歩くことが膝痛解消のリハビリ運動になります。O脚で膝の内側に痛みが出る場合は、靴の中敷の外側(着地をする踵・場合によっては前)にインソールを貼って、足の着地のバランスをとる方法も考えられます。それでも痛みが強い場合は、今は無理に歩かないことです。

 四十肩・五十肩でも同じ事が言えるのですが、整形外科や接骨院などで電気をあてたりすることは、その時の痛みを緩和するということが目的です。大切なのは、痛みが軽くなったら、痛みの出ない範囲でストレッチをする、エクササイズをする、歩くということです。

 鈴木指圧院では、全身の指圧やマッサージで痛みを緩和し老廃物の排出を促すだけでなく、ストレッチやエクササイズを行い、家に帰ってからもできる運動を提案して続けていただくようにしています。少し不安は解消されたでしょうか?

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2006年10月 9日 (月)

とても短い虹

 昨日の午後2時半頃、日光の金精峠のあたりに、とても短い虹を見ました。山にかかった低い雲から、7色には足りない太くて短い虹がしばらくの間はっきりと架かっていました。

 円弧の角度はわずかに5°くらいのものですが、もし空全体に広がることができたら、とても巨大なアーチを描いたはずです。風が強く、雲は山際にしか発達していなかったために、虹の橋が空に架かることはありませんでしたが、想像上の虹を架けさせるためか、それを見つけたときにはとてもドキドキしました。

 そこに見たのは、橋を架けた虹にある“虹のふもとの頼りなさ”ではなく、虹のふもとから湧き上がる、幻の虹への可能性です。

 こんな心の琴線に触れたドキドキを貯めていくと、心が枯渇していくことはないように思います。イン・ドアの仕事である指圧やマッサージをしている人が、閉鎖空間の中で新しい発見をできないでいると、閉塞感に押し潰されてクライアントの体からも新しい発見ができなくなってしまいます。

 自分の心と体のメンテナンスができて、初めてクライアントへの提案に説得力を持てるのですから、まずはおもしろい大人、“使える感”のある人になるために心の琴線に触れることを見つけて、ドキドキすることです。

 昨日は湯の花がタイルを覆いつくして歩くと足が痛く、温泉の鉄成分で浴槽が見えず足元の段差が危ない、そしてサウナも岩盤浴もない、とてもアバウトな日帰り温泉に入ることもでき、いろんなドキドキを体験しました。

 

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2006年10月 8日 (日)

腹筋のない人の腰痛と硬すぎる人の腰痛

 続けて腰痛の方に指圧をしたのですが、ほとんど同じ部位に痛みがあっても全く違う印象を持ちました。

 ひとりは腹筋の弱すぎる年配の女性、もうひとりは腹筋の硬すぎる陸上部の男子高校生です。

 その女性は一週間前から起き上がる時に激しい痛みがあるような腰痛が続いているとのことです。立位の前屈は痛みでほとんど上体を曲げることができません。横臥の体位変換でも痛みがありますが、伏臥位で背中を反らせることで痛みはありません。下肢伸展挙上テストでも痛みはありません。

 これらのことから、ヘルニアとは逆に、後ろから脊髄神経を圧迫している可能性を考えます。腹圧がかからないために腰椎が前にすべって神経を刺激しているのだと思います。筋肉を押圧して激しい痛みはないことから、靭帯や椎間板の変性も含めて、神経の刺激が原因と考えられます。

 一方、男子高校生の腰痛は、筋肉が緊張し過ぎていて、特に背柱起立筋と季肋部の腹筋の詰まり感は今までにない抵抗のある感触でした。週6日の練習で筋トレがあるということですが、あきらかにオーバーワークで体の休養が必要だと感じます。また、練習後のストレッチやアイシングなどのケアが不十分のようで、練習後に部員同士でマッサージをすることがあるというのですが、どの程度理にかなったものであるのか、筋肉の状態から察すると心配です。

 このふたりとも腰の上部に問題のある腰痛なのですが、気になったことは腹筋です。ウエストに脂肪がつき内臓下垂もある女性と、短期間でボクサー並みの硬い腹筋を作ってしまった男子高校生、どちらの腰痛もクオリティ・オブ・ライフという面から見ると、簡単には生活を変えられないのではないかと思います。

 たまたま続けて対照的なケースを指圧をしたのですが、どちらも毎日の生活の意識を変えることができなければ難治性だと思いました。

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2006年10月 7日 (土)

「腕立て伏せができない」と言った年配の女性

 「腕立て伏せができない」という電話の声から想像すると、60代の女性です。一瞬“またしても道場破りか!”と思います。“試されている、試されている!”田舎の治療院では、予想もしない悩みを抱えた方と自分の施術センスとの戦いです。

 冷静に考えると、年配の女性では稀な、“どうしても腕立て伏せがしたい人”であるわけはなく、プッシュアップ動作の時に手関節背屈で痛みが出る、おそらく手根伸筋の腱鞘炎であると思いました。

 翌日、手を診ると、母指末節骨が変形肥大してへベルデン結節を形成し、リウマチの血液検査ではRA(+)つまり陽性だとのことです。病院では現在リウマチの症状ではないということで、私も同感です。左右対称性の変形や、リウマチに多い中節骨の変形や痛みがないからです。RA(+)でもリウマチでない場合があり、RA(-)でもリウマチの場合があることは知っていていいと思います。

 更年期障害の治療後もエストロゲンを服用中とのことで、骨粗鬆症の診断は受けてないそうです。

 このケースでは、頚椎の神経根症状と長・短橈側手根伸筋にある肘関節の“曲池”“手三里”の硬結に注目しました。また仰臥位では右肩がマットから浮いてしまい、肘を曲げると前腕がマットから浮いてしまいます。

 頚部と両上肢の緊張を特に時間をかけてほぐし、全身指圧後、手関節の動きは、背屈・掌屈・橈屈・尺屈・回旋ともに支障なくできるようになりました。

 加齢による骨の変形も関係していると思いますが、手関節の背屈で痛みが出る場合は、手根伸筋や頚椎から肩関節を経て伸びてくる橈骨神経の影響を考えて、痛みが緩和した施術例です。

 

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2006年10月 6日 (金)

右膝外側と左膝後側が痛むケース

 「右膝の外側と左膝の後ろに痛みがあるので指圧をしてほしい」という方がいらっしゃいました。

 電話を受けた時点では、膝の外側の痛みを靭帯か半月板の損傷、あるいは股関節の外旋による大腿筋膜張筋の炎症などを考えました(関節軟骨の摩耗による膝痛は内側の場合が多いようです)。また、膝の後側の痛みは坐骨神経の影響と考えました。

 問診をすると、病院のMRⅠ検査で、腰椎の4番と5番の間の椎間板が潰れて変形していると言われたことがわかりました。臀部坐骨付近に圧痛もあり、左膝後側の痛みは坐骨神経痛であると判断しました。

 右足底前外側に胼胝(たこ)ができているということなので右下肢の重心は外側に流れています。ふくらはぎはむくんで右のほうがひとまわり太くなっています。

 頚は肩より前にあり、左鎖骨上部に詰まり感があります。猫背で、肩上部僧帽筋は左右ともに張り詰めた難治性と思える肩こりです。水泳で背泳ぎをしていた頃は肩こりを感じなかったというのも大きなヒントになります。こういった場合、猫背を解消し、肩を後ろに引いてから僧帽筋肩上部を圧すと痛みは消失、または緩和されます。

 頚前屈やや左回旋なので、バランスをとるために右肩甲骨下部の脊柱起立筋が緊張し、左大臀筋が緊張し、右股関節が硬くなり、左膝後側、右膝外側が緊張し、最終的には右足底前外側に体重がかかっています。

 右膝は大腿筋膜張筋と大腿四頭筋を緩めることで、痛みは消失し、全身指圧後、腰や頚、肩の痛みもなくなり、「今までにはない、痛いところに届いた感じがした」と言っていただきました。

 体は倒れないように左右の対角線にバランスをとっていくということを、あらためて感じたケースです。

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2006年10月 5日 (木)

施術法を知ることで痛みをとる

 昨日は飯能の生活の木・薬香草園で『症状別アロマトリートメント講座』の第1回、“肩こり”について講義をさせていただきました。

 当日参加の方もいて、予定より多くの方に来ていただき、十分な対応ができなかったことをお詫び申し上げます。

 初めて施術法を学ぶ方には、難しく感じたことと思いますが、体のこりをとるポイントは“痛くしない”“気持ちよく”“もの足りないくらいに”ということです。指や手掌に力を入れて圧す必要はないと思ってください。

 自分以外の体に『この体が自分だったら、今どうされたい?』と常に考えて触れていくことで、自分の肩こりへの対処法を作り上げていくことができます。

 肩関節の可動域を広げておくために、各方向へのストレッチは毎日行う必要があります。日課としてストレッチを取り入れていくと、ある日突然、肩こりが楽になっていることがあります。

 様々なレベルの方がいろいろな所から集まって、面白い空気感を作っていくというのが、毎回講座をしていて感じることです。

 次回は『足の冷え・むくみ・膝の痛み』をできるだけその場で解消したいと思います。チャレンジしてみる気持ちをくじきたくないので、次回も当日参加の方がいれば受け入れることになると思います。人数が多い場合、別の時間に振り分けられるか担当の方に相談しておきますが、半年前にスケジュールが出ていますので、まずは“私が何とかする”方向でスーパーエキセントリック・エンターテイメントな時間を作り上げたいと思います。

 

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2006年10月 4日 (水)

吐いた息が化石燃料になる

 石炭や石油などの化石燃料は植物由来のものです。日本アロマテラピー協会が日本アロマ環境協会と名前を変えたのも、植物からの恩恵に感謝し、自然と人間との共生をテーマに活動していくということを、よりわかりやすくアピールしたいということがあると思います。

 植物は二酸化炭素を吸収し、酸素を供給します。われわれ人間の吐き出した呼気に含まれる二酸化炭素も、遠い未来には植物が炭化して化石燃料になります。

 今使っている石炭や石油は、私たちの遠い祖先が吐き出した呼気が凝集されたものであるとも言えます。

 しっかり息を吐き、植物を育てる。小さな鉢植えからでも将来の化石燃料のために、自然環境の循環のために、誰もがしていくべきことではないでしょうか。

 ずっと先の未来には、誰かのため息でできた石炭があるかもしれません。

 人間は生物であるから、生きていることができればかなり目的を達成しています。人間は動物であるから、何とか動くことができればかなり目的を達成しています。たとえ動くことができなくても、呼吸をしていれば自然界に貢献しています。

 “人間はナマモノ(生物)であるから傷みやすい”でも、少々へこんでしまっても、しっかりと息を吐くことで、あなたはちゃんと皆のために貢献している人なのです。

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2006年10月 3日 (火)

脳梗塞後の頭痛の指圧

 病院で治療中の方には遠慮もあるのですが、主治医のお墨付きがあれば話は別です。頭痛を訴えたところ、これ以上薬を増やしたくないのでマッサージに行ってきなさいと言われたそうで、脳梗塞後久々の指圧に来られた方がいます。しかも病院から直行です。

 体に負担がかからないように仰臥位で、頭部顔面の指圧から始めます。額には熱を感じます。血管を拡張する薬や血栓を溶かす薬などを数種類服薬中のため、頭部への血流量が多く、のぼせているように思います。

 眼輪筋、咬筋、帽状腱膜は緊張し、項頭線の天柱、風池、完骨に詰まり感があります。左鎖骨上の胸鎖乳突筋を圧すと神経に触れた痛みを訴えます。

 左右前腕の曲池にも神経痛様の痛みがあります。手足に冷えはなく、上肢、下肢ともに筋肉の衰えがあります。

 頚部、背部を緩めるため横臥で指圧し、伏臥に移ります。後頭部に神経痛様の痛みがありますが項頭線の痛みは軽くなっています。肩甲骨下部の脊柱起立筋には左右共に筋肉の硬結があります。臀部から下肢を指圧し、緩みきっていない背部を横臥でもう一度指圧します。

 そして、椅子で座位の指圧をする頃には、頭痛の訴えはなくなっていました。

 このケースは筋緊張性の頭痛ですが、薬によって頭への血流が増えたことによるのぼせも関与しています。上肢下肢の筋力の衰えは末梢の血液循環を停滞させ、のぼせの一因となっています。

 頭痛を緩和することがこの施術のテーマですが、脳梗塞後で体力も十分ではないので、同じ姿勢を長くとらせないということを考えました。頻繁な体位変換で神経の痛みが出ている部位に角度を変えてアプローチしていくことで、痛みの少ない施術ができ、筋肉が緩み、頭痛が緩和されたのだと思います。

この施術には、緊張を緩めるためにラベンダー(ブルガリア産)の芳香浴と、『究極の眠れるCD』のBGMを使用しました。

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2006年10月 2日 (月)

『究極の眠れるCD』

 今CD屋さんのヒーリングミュージックのコーナーに、『究極の眠れるCD』というタイトルのCDがあります。

 タイトルにつられて買ってみたのですが、私は波の音や水音が気になって途中で目が覚めてしまいました。それで施術中に流すのをためらっていたのですが、ボリュームを小さくして使ってみたところ、そこそこの効果はあると見直しているところです。

 音楽だけでリラックスするのと違って、マッサージのバックミュージックとして流す場合は、タッチによる血管の拡張→体温の低下という具体的な眠りの条件が整うので、音楽の効果を検証できるわけではありません。

 またアロマの香りによるリラックス効果もプラスされていて、『究極の眠れるCD』は“とてもよく眠れる”とお勧めできるほどではないのですが、マッサージのBGMとしてはアリです。

 最初のメロディはとても良いのですが、自然音のミキシングのボリュームをもう少し考えないとうるさいということと、水音だけの時間が長すぎて不安になる感じを受けました。

 指圧をしながら、ボリュームを調整して使っています。

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2006年10月 1日 (日)

未経験者から始まるとはいえ…

 マッサージの求人広告を見ていたら、『スタッフのほとんどが未経験者でした』という説明がありました。自社研修で仕事が覚えられるということなのでしょうが、果たしてこの求人広告をお客様が見た場合どう思うかということです。

 やりがいや世の中に役に立つ感じがあって、未経験者でも容易に飛び込める世界であるなら、やってみようと思う人は多いと思います。

 しかし、経営のシステムに守られた中でだけ成立する未経験者集団のタッチには、すぐに限界が訪れます。お客様は、お店の看板や内装にリピートするのではないのです。

 昨日届いた日本指圧協会の会報には、ベテランの先生が“体のアライメント(alignmennt=骨や関節の並べ方)”や“ロルフィング(=理想的な垂直姿勢を作る手技を含めた方法)”について考察しておられました。

 どんなに経験を積んだ指圧師でも、まだまだ施術の向上を求めて、自分の感覚に近い理論を探し、独自の研究をしておられるのです。入口は広くなったかもしれないのですが、この仕事が続けられるかどうかは、自分の体に合った施術法を作り上げられるかどうかということにかかっています。

 もし簡単な研修でお客様の体に触れることになれば、想像以上にイバラの道となることだと思います。体に触れることは誰でもできます。しかし、効果の再現性があるタッチを続けていくとなると、未経験者がプロのリングで仕事をする厳しさに直面することとなります。

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