軽く触れても「背中が気持ち悪い」と訴える女性がいました。触診のための座位でも、横臥に移ってからも同じです。
ということは、仰臥位で普通程度の刺激はできないということです。胃腸症状による吐き気とは違う感覚だと言うのです。
考えられるのは脊髄神経が何もしなくても圧迫されているということです。ヘルニア、骨棘形成、靭帯硬化症のどれかかもしれません。神経が過敏になっていることは間違いないと思います。
2週間近く我慢してきたようですから、『どうなってしまうんだろう?』という不安で一杯だったと思います。背中はむくんでいて、血行の悪さも背中の気持ち悪さの原因だと思われます。
仰臥位で下肢から本格的な指圧をします。右足首の痛みと右股関節の回旋運動などから、右座骨神経痛があることがわかりました。これが背中の気持ち悪さの直接の原因かどうかはわかりませんが、原因になり得る症状ではあります。
上肢の指圧で肩甲下筋の圧痛を確認します。特徴的なのは背中の姿勢が良すぎることと、前胸部のこりがないことです。
一般的に肩甲下筋のこりがあれば、肩関節の内転内旋姿勢のため前胸部がこります。背中の症状を抑えるために、無理な力が入っていたのだと思います。
極めてソフトタッチで顔面、頭部、腹部をゆるめ、伏臥位にうつります。
肩上部僧帽筋は圧されて気持ちがいいという感覚だそうです。肩甲間部から腰部にかけては、母指の指紋部を乗せておく感覚で指圧をしていきます。
始めは圧されて気持ち悪い感覚が背中に残っていましたが、繰り返すうちに気持ちの悪さはなくなっていきました。
そして骨盤から下肢後側の座骨神経に沿った指圧をして施術を終えました。
右腰部はもう少しゆるめられる思ったのですが、施術時間が長すぎるのも疲れさせてしまう場合があるので、慎重を期しました。
立ち上がった時に、「今まで他で経験したことがないくらい、軽くなりました」という言葉をいただきました。
毎日股関節のストレッチをしていくと、腰から下肢にかけての辛さは緩和されていくはずです。
これは非常に難しい施術例です。クライアントの「背中の気持ち悪さ」をどう受けとめるかで施術の成否が決まります。
苦痛のニュアンスを自分の体に置き換えて考えることができなければ、今回のような施術は成立しません。
世の中にそういった施術者が少ないのであれば、その領域は活躍の場となります。指圧やアロマテラピーに流れるスピリットを自分のものにできていれば、そんなセラピストを必要としている方がたくさんいるのです。
参考:アロマミスト使用 フランキンセンス3滴、ベルガモット2滴、水70ml CD『MENTAL DETOX』
最近のコメント