« 2008年7月 | トップページ | 2008年9月 »

2008年8月31日 (日)

両手の火傷にできること

 揚げ物をしていて油が炎を上げ、両手に火傷を負った40代の女性、予約なしに飛び込んできました。

 火傷から3日目、両手は包帯に覆われていますが、指先の白い水ぶくれを覗き見ることができます。

 額や体からは微熱を感じ、まだ炎症が急性期にあることを感じます。

 サンダル履きで来た足は土に汚れ、『この時間しかなかった』というような、慌ててやってきた印象を受けました。

 処置の済んだ包帯をとってラベンダーを原液で塗り込むなどということはあり得ないので、パニックに傷んだ心と体をリラックスさせて、誘導的に火傷の回復を早めるような指圧をすることにしました。

 火傷に至る過程では、家族の問題など、大きなストレスを抱えていたことがわかります。揚げ物をしていながら注意散漫になった原因は、本人が自覚しています。

 指圧を受けながら、それをうかがえるようなことをポツポツと話していましたが、すぐに眠りの世界に入っていきました。

 両手の火傷ですが、それは痛みや緊張を通して、頚と肩のこりと、腰の筋肉の強いつっぱりをもたらしていました。

 深い眠りです。右肩上部僧帽筋の指圧のときに、「△×○……」と、意思だけの言葉をはっきりと寝言で語りました。

 それは誰かに何かを語る口調でした。古代の言葉のような響きにも聞こえました。心だけが音になっているのだと思いました。

 全身指圧をし、仰臥位でもとてもよく眠りました。

 施術後は、「すごくスッキリしました!」と、明るい顔で帰っていきました。

 アロママッサージでは必ず拭き取る足の汚れですが、今回は拭きませんでした。汚れを落とすのが、かえって失礼なような気がしました。

 その素足の汚れに彼女が気づかないはずがありませんが、その時は何でもないように扱おうと思いました。

 道のぬかるむ中を、“急いで抜け出してきた”のだと思います。

 もちろん、足の指圧の後は、自分の手を洗い、上肢や顔の指圧をしました。

 寝ている彼女を起こさないように、そーっと静かに手を洗い、エタノールで消毒をして、指圧を続けたのでした。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年8月30日 (土)

不眠症にローズマリーを選ぶ女性

 疲れていて眠れないという30代の女性、夏休みの子供たちへのサービスに疲れきった様子です。

 頚が右に側屈し、肩甲下部にはっきりとした折れ線のある猫背です。

 「マッサージはいつも痛い」そうで、アロマオイルマッサージが希望です。

 アロマ環境協会のアロマテラピーインストラクター試験に挑戦中で、アロマの勉強をしているのですが、不眠に対してラベンダーやクラリセージの提案は、その香りが“重い”ということで却下されてしまいました。

 『さっぱりした精油』を希望ということで、ローズマリー・シネオールとジュニパーを2:1の割合で、グレープシードオイルに希釈して1%濃度のブレンドオイルを作ってマッサージをすることになりました。

 オイルの軽擦でも肩甲骨周囲や側頚部には痛みがあり、ほぼ全身に痛み物質を溜めていました。

 精油の選択からも“むくみの自覚”があるようなのですが、実際はむくみよりも姿勢の悪さによる筋肉痛と精神疲労がローズマリーとジュニパーを選ばせたのでしょう。

 ローズマリーとジュニパーは空気清浄作用に優れ、昔から儀式的な使い方をされてきました。

 『子供たちに夏休みを楽しんでもらいたい』という頑張りすぎが、とうとう心身の限界にきたようです。

 むしろ集中力を増すための精油のブレンドでしたが、施術の後半はウトウトし、施術後はかなり眠たくなったようです。

 「帰ってからやることがたくさんあるから」という気持ちが、ラベンダーやクラリセージを遠ざけたということが、施術が終わってからわかりましたが、アロマテラピーは“頑張らない自分を認めること”でもあるのです。

 夜眠れないのは気が張っているからです。あれもこれもと思い浮かぶことがあり、次から次へと用事をこなしていれば、体も心も真からの休息が必要になります。

 アロマテラピーはライブセッションです。いろいろな状況でセラピストとクライアントが共に作り上げていく時間です。

 典型的でない精油が選ばれることがあり、そこには自分を緩められない、一旦緩めてしまうと立ち上がれないかもしれないと考えるクライアントがいるかもしれません。

 どうにもならなくなれば、またここがシェルターになります。自分の考えを持ってアロマテラピーに参加していただいていいと思います。

 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年8月29日 (金)

膝手術の前と後に予約をいただいたこと

 変形性膝関節症の手術をすることになった60代の女性が指圧にいらっしゃいました。そして手術前日の指圧と退院後のリハビリの予約をいただきました。

 手術をせず保存的な治療を続けるという選択肢もあったのですが、他の病気もあるので、体力があるうちに手術をするということになったようです。

 そうは決まったものの、手術が不安なようで、「夜眠れない。腰が痛い。肩がこる。」、などの症状があります。

 手術をする右膝をかばうためか、右下肢はむくんでいて、左の腰痛があります。肩も左肩がこっていて、前頚部と鎖骨外側上部僧帽筋に圧痛があります。

 左腰は最初の軽い指圧でポキッと音がして、軽くずれていた椎間関節がはまったようです。

 右膝をかばう意識が左半身を硬く緊張させていました。

 この腰痛が気になっていたようで、手術前検査のある入院の前日に、指圧の予約をいただきました。

 手術後のリハビリも心配しているようなので、「ここでやっていることは丁寧なリハビリのようなものなので、心配があったらいつでも来てください」と申し上げました。

 こんな時、誰か頼れる人がいれば心強いと思います。その場にいつも一緒にいることはできませんが、タッチの記憶が心地良いものなら、セラピストは寄り添っていくことができます。

 支えるまではいかないかもしれない、それでも寄り添って同じ時間を過ごすことはできます。

 もしも入院中に呼ばれたら、ちょっと遠い病院ですが、出かけていこうと思います。

 (このタッチが)必要とされるなんて、嬉しいじゃないですか!

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年8月28日 (木)

“なめこおろしそば”があって“おろしそば”はないという…。

 長野の善光寺に行ってきました。

 前に行ったのは長野オリンピックより前なので、門前の有名な七味唐辛子のお店を覚えていたくらいで、記憶とは随分と変わっていました。

 善男善女が昔から信仰する場所で、謙虚になり、少し重荷を預けたことにすれば、それでリセットボタンを押したことにしてしまいます。

 お参りをしておみくじを引いて、露店のおじさんから獲れたてのリンゴを買ったので、後はソバを食べれば“それらしさ”は完成です。

 門前の小奇麗なそば屋は、浅草でも見る屋号で“違うかな”とも思いましたが、おろしそばを注文すると「ないねぇ…」という返事の後、「なめこおろしそばはあるけど…」と続けます。

 「じゃ、それで」と注文し、出てきたモノは『値段のわりには…』と思うような感じがしました。

 なめこが際立って美味しくもないし、なめこおろしそばのなめこ抜きがその場の裁量で出て来ることは難しくもないのにと思いました。

 カツカレーライスがあって、カレーライスがない店があったら、かなり面倒臭い気持ちになります。トンカツとカレーライスがあって、カツカレーはできない店もかなり面倒臭いと思います。

 そば自体感動はなかったので、なめこおろしでもおろしでも問題は店選びだったようです。

 このことをマッサージに置き換えてみると、メニューに余計なものが入っていて、料金をとるためだけにそれほどうまくもない“なめこ”が入っている店があるということになります。

 なるほど、気をつけなければ。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年8月27日 (水)

クライアントの不安を“貰ってしまう”

 頭痛なり腰痛なり、クライアントの症状を貰ってしまうのは施術の姿勢に問題があると思っていますが、昨日はクライアントの不安が、かなりはっきりとした映像を結び、自分の不安のように残ってしまいました。決して誉められたことではありません。

 ほぼ半年ぶりに指圧にいらしゃった60代の女性、旦那さんに脳の海馬の異常が見つかり、初期のアルツハイマーで目が離せず、指圧に来ることができなかったとお話しになります。

 体の弱い女性だと思っていましたが、背中の筋肉は体力のある人のように硬くなっています。

 状況に鍛えられたということでしょうか。

 旦那さんがお酒を飲んで車を運転しようとし、その前に彼女が立ちはだかるシーン、その後親戚の家まで行ってしまったその居間の場面、言い争いになる家族、背中の指圧をしながら、かなりはっきりとした映像が浮かびました。

 人生の総決算とも言える時期にこそ、平穏な暮らしがガラガラと崩れそうな出来事が次々と襲ってくるようです。

 自分の健康の問題、家族の健康の問題、お金の問題、DV(家庭内暴力)…。

 背中を圧す行為は浄霊に近い性質を持つことがあります。ストレスというターゲットを筋肉のこりとして除いていくわけで、それをまともに貰ってしまっているようでは、セラピストとしては未熟だし、迂闊でした。

 『地位やお金があっても幸せな人生とは限らない。そこにも必ず葛藤や不幸があるでしょう。もしかしたら、いくつかの分かれ道でどのような選択をしていたとしても、この一つの人生以外を生きることはないのかもしれない…』、そんなことを話したりしながら指圧をしました。

 余計な事を言わなくても、彼女は今の状況に鍛えられ以前よりタフになっているようです。

 私こそ気分転換をしなければいけません。

| | コメント (0) | トラックバック (1)

2008年8月26日 (火)

タッチは“置きにいく”

 野球でピッチャーがストライクが欲しくて、小さなフォームで投げて打たれると「置きにいっては打たれますねぇ」などと批判的な解説をされます。

 しかしタッチの場合は、自分の最高のフォームで最強のタッチをしようとするのは甚だしい勘違いです。タッチは慎重に置きにいくのが良いのです。

 そこに何があるか、わからないのです。

 まず最初に、そこに何があるかを探る“触診のタッチ”があっていい、「ここに触れますよ」という“お知らせのタッチ”があっていいのです。

 時として、軽く指圧をしていても、カイロプラクティックのように椎骨の矯正ができることがあります。

 しかし、音を立てて椎骨が矯正されるようなカイロのタッチと、指圧やマッサージのタッチは違うものと考えておいたほうがよいでしょう。

 筋肉を気持ちよくゆるめ、自然に骨が牽引されてもとの位置に収まるようなタッチを考えておくことです。

 私は背中が丸くなった骨粗鬆症の方の背中をポキッといわせてしまうと、ドキッとします。そんな時は『もっと弱く』と反省し、弱い刺激で矯正していくことこそが手技療法の最高のテクニックであると感じています。

 腸を強く刺激するバウエルマッサージのような手技は、癌があればできない、子宮内膜症があればできないと考えるべきです。そして潜在する病気の存在を否定することは、タッチセラピストにはできないのです。

 タッチを置きにいく、経験を積んだセラピストほど、そう考えているはずです。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年8月25日 (月)

偶然引き当てること

 琴線に引っかかる本を探していて、表紙にファンタジー特集とある月刊の文芸誌を買いました。

 その後ラジオで、赤塚不二夫さんとの思い出を語る黒柳徹子さんのインタビューを聞きました。

 その後買ってきた文芸誌の中に、赤塚不二夫さんのことを書いた黒柳徹子さんの文章を見つけて読みました。表紙からこの文章の存在はわからないのですが。

 偶然ですが、興味があるから引き当てたことでもあります。

 最近何とはなしに、気球で行方不明になった『風船オジサン』のことを思い出し、その後第二次世界大戦末期に日本が作った『風船爆弾』のドキュメントを見て、ジューン・ベルヌの『80日間世界一周』を思い出し、『ファンタジー小説でも読みたいな…』という、ボンヤリとした流れはあったみたいな気がします。

 大変失礼だとは思いますが、『風船オジサン』はバカボンのパパのようです。

 ジェット気流に乗って、どこか遠くを、今も飛んでいるのでは、と思います。

 黒柳徹子さんは、赤塚不二夫さん告別式のタモリさんの弔辞に触れ、その内容の素晴らしさだけでなく、白紙を読んでいる様にめくるその演技力を賞賛していました。女優としての目の付け所に感心しました。

 まだ二十代の頃にテレビのレギュラー番組で黒柳さんと共演していた赤塚さんが、殺人的なスケジュールの中、黒柳さんの大阪の公演先まで訪ねてきて「来ちゃった…」と言ったあたりのエピソードは、赤塚さんの甘酸っぱく切ない気持ちが伝わってきます。

 何となく手に取った本が、意外な心の動きを与えてくれました。

 情報をリアルタイムに近く共有できる現代では、興味は誘導され、モノは買わされているのかもしれません。

 それでもその中にも後付けで意味を持ち、線となって結ばれる事柄があります。

 興味を引いたモノの中には、自分の核になるものがどこかに潜んでいるようです。

 バカボンのパパの『これでいいのだ!』を英訳するとどうなるだろうなどと考えています。頭に「何はともあれ」をつけたほうがいいか、「結果となったことに対しては天の理としてよしとする」とでもするか、単に「YES IT IS !」でも結構含みがあるか…。

 興味があること、興味がある人、引いてくる、また引こうとしている…。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年8月24日 (日)

Forgive and Forget

 「Forgive and Forget(許しましょう。そして忘れましょう。)」、第二次世界大戦末期、一般市民10万人の死者が出たマニラ市街戦を追ったドキュメンタリーで、家族を失った女性が語った言葉です。

 凄惨な現場で生き残り、長い年月をかけて“心をそこに落とす”ようにしたのでしょう。

 “Forgive and Forget”、毎日の小さな後悔の積み重ねも、そうして心の落としどころを作っていくことになります。

  他人が許せないというよりも、“許せない自分が許せない”、“小さな後悔をひきずる自分が許せない”ということは多々あります。

 昨日は最高気温が20℃を下回るような天気でした。

 一病を持つ男性は長袖の防備で冷えはなく、“息災“でした。

 風邪を引きそうで足がだるいという女性は、水中ウォーキングを始めたそうで下半身は問題なく、肩周りと背中にむくみが溜まっていました。

 施術後、血液循環が良くなって体温が上昇し、熱を発散し始めましたが、今朝はもっと楽になっているでしょうか?

 夜、電話で問い合わせてきた女性は、指圧やマッサージにはさほど期待していない感じがしました。

 「おたくはどういうことをするのですか?」

 滔々と語ってしまいましたが『これは通じていないな』と思いました。

 わからなくても仕方がありません。良いタッチに出会った経験がなければ、タッチに期待などできません。

 昨日の後悔は、『こういう人にこそ良いタッチをしたい』ということです。

 普段、感じのいい営業トークをする気がないのですが、昨日はセールストークをしておけばよかったと思いました。

 たぶん「またお願いします…」というニュアンスは、『私の行く所ではなさそうだ』と感じたのだと思います。

 それは全くかまわないのですが、『どうか彼女が良いタッチに出会いますように』と願わずにはいられません。

 彼女は自分の状態を持てあましていたように感じました。心身を補う素晴らしいタッチに出会うことができれば、きっと人生が変わります。

 とんでもなくひどい電話の応対をしたわけではなかったのですが、何だか悔やまれました。あの心象風景には良いタッチが必要だと思いました。

 今日は今日のことがもう始まっています。昨日のことは、「Forgive and Forget」です。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年8月23日 (土)

自分のツボを通しておくこと

 自分のツボがツボとして機能するように、自分の経絡が通じているように、ストレッチやタッチで確かめておくことと日々の体調管理は、施術をするために欠かせないことだと思っています。

 施術の本番でクライアントの体調に合わせたタッチをするためには、自分の体をニュートラルな状態にしておくことと、想像力を駆使するために頭の柔軟性を高めておくことが大切です。

 昨日、肩こりの女性の大腿前側の指圧をしていた時、彼女のおなかが動いてキューッという音が聞こえ始めると、しばらくして私のおなかも同じような音をたてながら動き始めました。

 『リラックスしておなかが動きだしたなぁ…今、気持ちいいんだろうねぇ…』という想像が、自分のおなかを指圧したのと同じ状態にさせたのです。

 よくあることですが、クライアントの体と程好く繋がった状態になると、クライアントへの指圧が自分の体の指圧にもなります。

 プラシーボ効果のようなことですが、『効いているだろうな』と感じることが自分の体のツボをも刺激するのだろうと思います。

 “どんだけ自分のタッチが好きなんだ!”とあきれられてしまいそうですが、それくらいの思い入れがないと、自分の体から薬を出すことはできないのだろうと感じています。

 自分の体から実際には薬など出ていないのかもしれませんが、気配りという小さな感触も見逃さないセンサーを通したタッチは、ただ触るのとは違う効果を持っているようです。

 あるレストランでの会食で、私の指圧を受けた方が3人、受けたことのない方に他のマッサージとどう違うかということを説明したけれど、みんなポカンとしていたそうです。

 「あの先生は来る人によってアロマや音楽を変えて、体の臭いや痛みのある部分から、病気やどのような体の使い方をしていたかわかる」、セラピストなら当たり前のことですが、説明された人は胡散臭くて気持ち悪かっただろうと思います。

 要は自分の体が痛みを持たないようにツボを通しておくこと、クライアントの体を思いやる想像力をフルに発揮するために、頭の柔軟性を高めておくことです。

 私は準備に大変時間がかかります。朝は4時に起きないと9時の施術の準備が慌ただしくなっていまいます。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年8月22日 (金)

顔面神経麻痺

 「7月末、炎天下の作業で顔の右半分が硬直し、右目が閉じなくなった」という70代の女性、神経内科のMRI検査で脳に異常がないことはわかっています。

 電話の様子から『末梢性顔面神経麻痺(ベル麻痺)』であると思われ、頚や肩の頑固なこりがあるだろうと考えていました。

 その女性はマスクをしてやって来ました。マスクをはずすと左の口角が下がっています。

 右肩上部のこり、右肘『曲池』『手三里』のこり、右『合谷』のこりがあるので、大腸経を介して、左口角の麻痺であれば東洋医学的には理解しやすいのですが、右目が閉じず、右顔面に硬直があります。

 加齢的な顔のたるみが、患側である顔の右半分を正常に見せ、左の顔を歪んで見せています。これは気をつけなければいけないところです。

 背中が丸くなっていて、骨粗鬆症の心配もあります。

 病院で投薬されている薬を見せていただきましたが、それは4年前から高血圧として出されているという、血管拡張薬、ビタミンE,ビタミンB12でした。 

 この処方であれば、脳血管障害か末梢神経障害、あるいは動脈硬化の診断がされているのではないかと思います。

 顎関節症もあって「マシュマロのようだ」というのは、おそらく関節円板の状態のことなのでしょう。

 指圧中、顎を左右にコリッと動かす癖があり、血液循環が良くなってかゆくなったのか、しきりに顎や顔を指でかいています。

 突発性末梢神経性の顔面麻痺ならば、今までの経験から比較的簡単に指圧で治せると思っていました。

 しかし、耳の前の顔面神経の出口に近い顎関節の形状に問題があれば、顔面神経の伝達は阻害されやすくなっているのだろうと思います。

 全身指圧と顔への軽いサークリングを中心とした施術をしました。

 麻痺に対しては神経を興奮させる軽い刺激が基本です。強圧や持続圧のように神経を鎮静させる刺激をしてはいけません。

 寝ている間は顔の左右対称がつりあってきたと思ったのですが、起き上がってもらうと左の口角がやや垂れています。

 左が正常で、正常に見える右が引きつっているというのはなんともややこしいことです。教科書通りの思い込みはいけないのだと、こんな事からも勉強になります。

 右目は少し閉じやすくなったのですが、まだ右半分がこわばっているそうです。ただ、今はマスクをしなくても顔の歪みに気づく人は少ないのではないかと思うような顔のバランスになっています。

 眼鏡をしている方なので、眼鏡の上枠を超えて上を見ることや、口角を上げ頬に丸みを作る表情筋の運動をするようにアドバイスさせていただきました。

 この顔面麻痺は顎関節症との関係がありそうです。関節円板の影響などが大きいようならば、手技療法の限界を計りながら次回の施術をすることになります。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年8月21日 (木)

エロスとタナトス

 安息や治療のために人間の体に触れる行為を通して、いつも浮かぶのが“エロスとタナトス”という概念です。

 “エロス”は性愛としての生、あるいは生の欲動というようにとらえることができますが、タッチから伝わるものは、生まれ変わろうとする再生のイメージです。

 そしてエロスと常に対峙しているのは、死への恐れ“タナトス”です。

 皮膚のターンオーバーにしても、皮膚細胞からクローン生命が誕生しようという現代においては、それはエロスそのものではないかと感じます。

 死への恐怖があればこそ、治療行為が発達し、タッチによって蘇える人がいます。

 エロスとタナトスは陰陽の概念と同じく背中合わせで、どの刹那にも選択肢として人間に突きつけられているのだと感じます。

 昨日、帝王切開後胎盤剥離手術中に大量出血で女性が死亡した医療行為をめぐる裁判がありました。

 この問題を論じることは難しく判断はできませんが、それはまさにエロスとタナトスがギリギリの状態でせめぎあった時間だったと思います。

 昨日指圧をした癌の手術をへて後期高齢者なったという女性の足は、とてもスベスベとしてきれいでした。この女性の足も、5年生存率というタナトスを背負ったエロスだと思いました。

 官能的なお祭りのようなエロスは、実は毎秒体の再生として続いていて、一歩踏み外せばタナトスに支配されます。

 女性は女性ホルモンというエロスに肌や健康の状態を支配され、男性は男性ホルモンに惑います。

 人の体に触れていくと、エロスが亢進しタナトスが減退していくのを感じます。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年8月20日 (水)

背中の痛み・肺癌を心配する男性

 60代男性、15年前にタバコをやめています。主訴は背中の痛みで、肺癌を心配しています。

 肩甲間部の指圧では、右第3・4胸椎間で棘突起から1寸5分の『肺兪』が一番硬いことがわかります。

 右前腕内側で橈側の『肺経』の筋肉にも硬さがあります。

 右寸口の脈が微弱で沈、肺の疾患が疑われないわけではありません。

 しかし、咳、痰などの呼吸器症状がなく、全身症状や顔色も病的には診えません。

 他に肺の症状は右頬、舌尖、右腹部(上行結腸)などで診ますが、いずれも肺の疾患を感じるものはありません。

 肺癌の方は何人か診てきましたが、他の臓器からの転移では、肺の症状がない方もいました。

 そして長年の喫煙で肺癌を患った方には、呼吸器症状がありました。

 結論を言えば、指圧で肺癌なのかどうかはわかりません。切診や望診で初期の癌がわかることはないと思います。

 診て触れてある程度、体の状態を言い当てると、何でもわかるだろうと期待して尋ねられることがありますが、判断の篩(ふるい)に引っかかる事実を積み上げているだけなので、網の目より細かいモノにいい加減な答えは出せません。

 ただ、癌の内臓筋肉反射としての『肺兪』の硬結なら、もっと微妙なもののように思います。

 運転のし過ぎ、猫背姿勢による背中と前腕『肺経』の筋肉の緊張だと感じました。

 肺癌かどうかを調べるには、医療機関で検査をするしかないと思います。呼吸器症状がない段階で、一般的に肺癌の検査まではしないとは思いますが…。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年8月19日 (火)

骨が冷えるという感覚

 急に涼しくなると、体は冷えを溜め、筋肉が硬くなったり、関節が痛んだり、風邪をひいたりします。

 夕方や明け方の急な温度の低下にはこれから注意が必要ですし、エアコンの設定も季節の変化に対応していかないと体調を崩す原因となります。

 先週秋川渓谷でバーベキューをして風邪気味だった方は、指圧後鼻水が止まり、その後体調がすっかり戻ったということでした。

 ひき始めでまだ表層の風邪症状であれば、指圧による全身の血行促進が効果を発揮します。“頚、肩のこりがあって背中がゾクゾクする”葛根湯の証であれば、贅沢な治療法になりますが、葛根湯より指圧のほうが効果があると思います

 背中がゾクゾクするという状態は、肩甲骨などの骨が冷えるのではないかという感覚を持っています。

 熱を産生する筋肉の少ない部位は体温が低下しやすくなります。

 第2・第3胸椎間で棘突起から1寸5分の『風門』から侵入した風邪は、項窩と乳様突起の真ん中にある『風池』に溜まり、さらに体の奥へと症状を広げていきます。

 骨の際にツボがあるということは、骨が外邪に曝されているからであるとも言えます。

 骨の役割は『体の支持、運動、保護、電解質の貯蔵、造血作用』で、筋肉のように熱を産み体温を上げることはできません。

 これからの季節は、施術の時に特に『肘と膝の冷えを確認すること』が大切です。

 夏服で外気に触れている肘や膝に冷えを感じたら、温める施術をしなければなりません。場合によってはタオルを巻きつけるということもいいと思います。

 肘や膝だけでなく、肩や骨盤などの大きな関節のある部位は、骨によって冷え、肩こりや腰痛を起こすということもあると思います。

 施術の時は体温の部位による違いを感知し、対処することです。肘や膝のある上肢外側や下肢前側に冷えを溜めている人がそろそろ多くなります。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年8月18日 (月)

便秘には恥骨から左上前腸骨棘に向かう刺激も有効

 昨晩は久しぶりに涼しい夜でした。しかし夏バテの体には、この温度の急激な変化がストレスとなります。

 汗で体の水分が奪われていた猛暑の期間に、便秘がひどくなったという方がいると思います。

 この涼しさは続かないようなので、ぶり返した暑さによって自律神経の調節が乱されて、さらに便秘が続くということもあるかもしれません。

 便秘のマッサージというと、排便の流れに沿った“「の」の字”の刺激というのが一般的です。

 しかし一向に効かないという方がいるものです。

 腹筋の弱さ、運動不足、不適切な食事などの要素も否定できませんが、大腸の形状を考えてみると、“「の」の字”の刺激では快便にならない理由が見えてきます。

 大腸は、結腸膨起という規則的なふくらみの連なりですから、“くびれ”が何箇所もあります。

 糞塊がくびれでつっかえているとしたら、先へ送ることだけ考えても交通渋滞を起こすような状況を作り出してしまいます。

 恥骨から左上前腸骨棘へ向かう刺激は、このくびれに突っ込んでしまった糞塊を一度バックさせ、結腸膨起の中央に戻すことを目的とします。

 便秘のマッサージでは、この左下腹部のS状結腸をどのように刺激するかが施術の仕上げになります。

 もちろん、腹部マッサージの始めの部分は“「の」の字”に刺激でいいと思います。頑固な便秘には腸壁に意外性の刺激を与えてみることです。

 S状結腸は内下方に向かい直接刺激できない所もあるのですが、その先の直腸が仙骨の湾曲に沿って下行することを考えれば、便秘に仙骨の刺激も有効なわけです。

 第2仙骨神経が骨盤内臓を支配することからも、仙骨中央を下行する指圧は直腸を刺激します。

 仙骨神経は副交感神経ですから、全身性の、心身をリラックスさせる施術をした上で、便秘のマッサージが効果を示すことは言うまでもありません。

 恥骨から左上前腸骨棘に向かう刺激は、健康な方なら手根部で強擦してよいと思います。

 先日、頑固な便秘の方に施術して、翌朝快便であったという報告をいたただきました。

| | コメント (0) | トラックバック (1)

2008年8月17日 (日)

夏は尿たんぱく陽性になることも…

 「尿たんぱくが陽性だった…」、糖尿病でインスリン自己注射をしている男性が、不安な顔で指圧にいらっしゃいました。

 指圧を受け始めて以来、血糖値が下がって足の冷えもなくなっていた方です。

 脈を診ると、確かに左尺中の膀胱・腎の脈が微弱です。

 腰がやや右に側弯し、ちょうど右腎兪に硬さを感じます。

 眼瞼など顔のむくみや下肢のむくみはありません。冷えもなく、腰の他で筋肉が硬いのは、右肩上部から前腕外側に沿った大腸経のラインと、胃経の右大腿前側、それに左大腿内側です。

 ゴルフをする方なので、左股関節を内旋せ、腰をひねり、右膝は伸ばして右足は正面を向いていたということなのでしょう。

 全身状態から腎の病という印象は受けませんでした。

 汗をたくさんかくということなので、その影響なのではないかとお話ししました。

 尿たんぱくは、運動後、入浴後、発熱後にも陽性になることがあります。35℃以上の日であれば入浴しているようなものです。

 指圧をした感じでは、むしろいつもよりも調子が良いのではないかと思いました。

 不安の叩き台としての施術でいいと思います。体の現実を明らかにしていくことで、クライアントに納得があればいいと思います。

 不安が現実となることもありますが、先回りの不安が過剰であれば、少し重荷を減らしておくことです。

 そのためには知識も技術も駆け引きも身につける必要があります。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年8月16日 (土)

ヴァイオリニスト、アメリカへ帰る

 ヴァイオリニストの女性の、この夏最後の指圧をしました。彼女はまたアメリカへ帰ります。次に指圧をするのは4ヶ月後の予定です。

 最初の指圧から3日を空けて、その後1週間毎に合計6回の指圧をしました。

 主訴は頚から肩の痛みでしたが、後半は主訴よりも腰の施術が主になりました。

 むくみやすい体質を指摘したところ、病院で検査をする気になり、病院の先生にも同じような指摘をされたようですが、腎臓に異常はなかったということです。

 こちらとしても腎臓病まで疑ってはいなかったのですが、よく信頼していただいたということだと思います。体の状態を血液検査で調べておくことは大切なことです。

 ヴァイオリンを挟む頚の神経は、長年の練習で過敏になっています。頚を左回旋させ顎を引いた形になっていることが多いので、鏡を見て正中線に対して左右のバランスをとることを普段から意識する必要があります。

 弓を扱う右上腕は、肘が伸びることがないので上腕三頭筋の筋力が落ちてしまっています。曲げた肘を後方に伸展挙上するペットボトル体操は必要でしょう。

 リズムをとり炎症を起こしやすい右足の甲の長指伸筋腱や、股関節を開き踏ん張るため腰痛がおきやすいことなど、ヴァイオリンと体の関係について随分と勉強になった1ヶ月でした。

 収穫は姿勢を良くする意識を持ったことです。キーワードは胸を張ること、“バストアップしていなかったらストレスを溜めることになる”、それだけは何度も言ってきました。

 最後に頚・肩・腰のストレッチが微妙な角度と持続によって効果が違ってくることを、体で覚えてもらいました。

 ストレッチが自分のものになるには時間がかかります。始めは効果がわからないかもしれませんが、毎日続けることによって大きな味方になってくれます。

 こっそりと応援する人がまたひとり増えました。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年8月15日 (金)

タッチの良し悪しは着地で決まる

 指圧でもアロマオイルトリートメントでも、“どこに、どのように着地をするか?”ということが命です。

 滑らかな、躊躇のない施術は、必ず何かを見逃すことになります。

 考えながら少しためらいの間が空いても、気持ちのいい間であれば、それは“f分の1のゆらぎ”といえます。

 ひとつの筋肉の腱から腱までを捉えたタッチは、腱紡錘を刺激して筋肉を緩めます。

 最悪なのは着地は考えずに、“途中でこねること”です。こねてしまうと、刺激の連続性、一貫性が断たれて不快なタッチとなり、クライアントは現実に引き戻されてしまいます。

 着地を決めたら、後は体重移動にまかせて自然な漸増漸減圧をかけていくことです。

 強い刺激もできる、滑らかな施術もできる、というのは最低条件で、実際の臨床では、その日その時のクライアントの状態に適した刺激が求められます。

 施術の時の位置どりは部位毎に変わります。スタンスの間隔、爪先の向き、腰のひねり具合など、適切な構えを得て呼吸を整えるわずか1~2秒がタッチの良し悪しを決定します。

 構えと呼吸がそろったらそこに気持ちを乗せて、タッチによって触覚から脳へ伝わる情報を、もう一度タッチに乗せていきます。

 『指圧は圧さない、軽擦は滑らせない』、逆説的な命題ですが、逆張りの発想の中にこそ、飛躍的な進歩のヒントを孕んでいます。

 ずーっとこの事を考えていくといいと思います。タッチは、タッチをしてから小細工をすると気持ちの悪いモノになり、時には台無しになります。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年8月14日 (木)

退行催眠の中での口吸い

 疲れている方が来る場所ではあるのですが、ここのところ皆さん本当に疲れています。

 40代女性、何度か指圧をしている方ですが、仕事帰りに飛び込みでやってきました。

 その時は施術中で、次の予約がなかったので、20分程待っていただくことになりました。

 待合室もエアコンがつけてあったのですが、施術が終わって呼び込もうとすると、猛暑の中、その女性は車の中で待っていました。

 こういう方は他人に聞かれたくないストレスを抱えています。

 案の定、椅子に座るなり家庭の問題をぶちまけるように吐き出していきます。確かに、とても他人には聞かせられないプライベートな問題です。

 親しいとは言えないのに、それをぶつける相手に選ばれたかと思うと、引き気味にはなりますが冥利でもあります。

 「疲れているので、足をたくさんやってください」

 この望みだけを聞いて、ON DEMAND (即要求に答える) で施術を始めます。

 すぐに爆睡モードに入り、足の指圧ではおなかが動き始めました。要求は的を射ていました。自分の体のウイークポイントがわかっていたということです。たいしたものです。

 伏臥位では眠りながら“口吸い”を始めました。赤ちゃんが眠りながらやる“”エアオッパイ”のようなものです。

 深いリラックスをすると、自律神経が調整される中で退行催眠のような状態になるのだと思います。

 “口吸い”は女性では何度か見たことがありますが、男性では見たことがありません(できれば今後も男性はナシでお願いしたいものです)。

 ストレスを抱えて、誰かに託したい、委ねたい、という思いが満たされると、今まで張り詰めて我慢し続けてきた自分の殻が崩壊して、素の弱い自分が一番弱かった年齢まで遡るのではないでしょうか?

 施術後、10才は若返った別人のような顔で帰っていかれました。いくらなんでも、40才若返ったままということはさすがにないようです。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年8月13日 (水)

「これが野口みずき選手の痛めた筋肉です」

 プロならばマッサージの空間に世間の話題を取り入れてほしいと思います。私がマッサージを受ける側なら、きっとそう思います。

 マラソンの野口みずき選手が北京を欠場することになったのは、残念なことです。4年間目標として掲げ、苛酷なまでの練習を続けて、寸前での故障とは現実は残酷です。

 『痛めた大腿二頭筋をかばったため半腱様筋が肉離れを起こした』ということのようです。

 大腿二頭筋も半腱様筋も、坐骨結節に始まる大腿後側の筋肉です。膝を曲げ股関節を伸展(後方挙上)します。

 走る時の働きは、足の着地後、地面を強く蹴って膝を曲げ、大腿を後方に伸ばすことです。

 膝下で、大腿二頭筋は外側の腓骨頭に、半腱様筋は内側の脛骨粗面内側に付きます。

 大腿二頭筋をかばって膝を内旋気味に曲げたため、半腱様筋の故障が起きたのでしょう。

 しかも一歩のストライドを大きく取る走法のため、股関節の伸展が大きく、臀部付近で肉離れが起きたのだと思います。

 さて、マッサージの営業上のお話しです。腰痛の人が来たとします。

 腰背部から臀部の筋肉をゆるめたら、大腿後側を施術することになります。

 殿筋溝の一点目、外側と内側を圧しながら「これが野口みずきさんの痛めたところです。あっ、肉離れはしていないですね…」くらいのリップサービスは是非してほしいと思います。

 半分くらいの人しか興味がなかったとしても、サービス業とはそういうものです。

 私はすでに昨日、急性腰痛の2回目(発症から4日目)の指圧で言ってみました。

 非常に状態が良くなっていたので、その後、夕食の会話に上ったのではないかと推察しています。情報のお土産くらいは、いつでも用意しておきたいものです。

 野口選手は今とても辛いと思います。オリンピックに向けての調整は、タイトロープを渡るようなギリギリの難しさがあるのだと知りました。

 私が施術した肉離れと思われる症例で、殿筋溝付近というのは皆無です。普通の体の使い方ではないことだけはわかります。

 どうか元気になってください。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年8月12日 (火)

縁側から落ちて指がしびれる80代の女性

 日曜日の夕方は日射しもなく涼しい風も吹いていました。猛暑で見ないふりをしていた庭の草取りをしたくなるような天気でした。

 「縁側から小さな事務用のはさみで、手の届く草を切っていた」という80代の女性。

 「バランスを崩し、庭に落ちた時に両手をついて、その後水を使うと指先がしびれるが、明日の午前中に予約できるか?」という電話です。

 電話をいただいたのは日曜の夜、その内容から、体を強打したり頭を打つなどのことはなかったようなので、緊急に病院に行くほどではないと判断しました。

 9時からは予約が入っていたので、10時の予約とし、指には冷湿布を貼るように勧めました。幸い冷湿布の買い置きがあったようです。

 翌日、その女性は「おやつに…」と菓子を持っていらっしゃいました。お盆で家族が留守だそうで、昨晩は心細かったのでしょう。行ってあげればよかったと思いました。

 椅子に座ってもらって、両手を診ます。ハサミを持ったまま両手を軽くグーに握って落ちたようです。両手の指紋部がやや赤いのですが、肘まで屈筋や伸筋を圧しても痛みはありません。

 左眉の上に3cmの切り傷があります。大事にならなくてよかったと思います。

 頚の影響で指がしびれることもあると考えて、頚から肩、上肢、背部と圧してみます。

 頚から腰までかなり硬くなっています。相当な緊張だったようです。

 伏臥位、仰臥位と指圧をし、よく眠りました。上肢の指圧で目を覚ます事がなかったので、捻挫や骨折などはないようです。

 施術後、もう一度椅子に腰掛けていただき、水を入れた洗面器に指をつけていただきました。しびれはほとんど感じないということです。

 念のため、ローズマリ・シネオールをグレープシードオイルに1%に希釈して、オイルマッサージをしながら、腱や骨、筋肉の痛みを確認していきます。

 指の変形は多少あるので、変形のある関節には「この指は前からこんな感じでしたか」と聞きながらマッサージをしました。

 屈筋支帯の痛みもなく、可能性を考えた手根管症候群も除外できそうです。

 何度も指圧をさせていただいた指です。縁側から転落してしびれが起きた原因は、打撲で指先の毛細血管が傷ついたということではないかと思います。

 包丁を使う時に添える“猫の手”のような形で地面に落ちたのでしょう。

 指圧師の判断としては、見逃した大きな怪我はないと思います。腰痛でも施術後の正否については、いつもこれくらいの見当をつけているということになります。

 動かして痛みがない、圧して痛みがない、施術前よりしびれがなくなっている、全身状態が良くなっている、よって大事ではない。

 しかし万、万が一ということもあります。腫れてきたり、痛みが強くなるようならば病院へ行ってくださいと申し上げました。

 おそらく今日はもっと良くなっていると思います。帰り際、「お盆はお休みですか?」と尋ねられたので、「(世間はお盆であろうが、あなたの(ような方の)ために)やっています。心配な事があったら、また電話してください」と申し上げました。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年8月11日 (月)

タモリさんの弔辞・谷亮子選手の試合後の毅然とした態度

 先週心に残ったことに、漫画家・赤塚不二夫先生の告別式でのタモリさんの弔辞と、準決勝で敗れた後3位決定戦に勝って銅メダルを取った谷亮子選手の毅然とした態度があります。

 タモリさんの弔辞はインターネット上でもたくさん書き込まれていますが、とてもよいものでした。あのような弔辞が読める人物はそうはいないと思います。

 本当のホントの気持ちは、もっと数倍も深いものであって、おそらくシャイな方なので、あの弔辞についてはもう触れないのが大人のルールでしょう。

 谷選手は誤審とクレームがつけられそうな負けにもかかわらず、負けを受け入れ、その後3位決定戦に勝って銅メダルを取りました。

 勝ちと誰にでもわかる勝ちでなければ、谷亮子の勝ちではないという美学があるのだと思いました。

 常勝のように思っていましたが、何度も何度も負けて、精神的にも鍛えられてトップの座を維持してきたのだと思います。

 谷選手は準決勝で負けを宣告された時、一瞬呆気に取られたような顔をした後、すぐに切り換えて毅然とした態度で負けを受け入れました。

 タモリさんも谷選手も、第一線の緊張感の中で“超然”を身につけてきたのかもしれません。

 常人ならぬものがそこにはあったと感じました。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年8月10日 (日)

鍼の練習法はタッチにも通じる

 『漫画ハリ入門』(医道の日本社 ¥1,600)という本を読みました。

 明治政府が西洋医学を採用したことにより東洋医学の衰退が始まり、その後復興していく様子を、鍼治療の日常を交えながら描いています。

 その中に鍼の修練として、『桐板』→『杉板』→『樫板』とだんだんと固い板に刺していき、次に『洗面器の水に浮かんだミカン』→『障子に止まったハエを裏から刺して抜いたら飛び立てるようにする』→『寝ている猫に刺しても起きないようにする』というのがありました。

 始めの三つは垂直圧の練習、“水に浮かんだミカン”は柔らかい組織に対する力の加減、最後の二つは気持ちのいい刺激(ダメージを与えない刺激)です。

 指圧でも始めの頃は硬い筋肉を捉えようとしても、クリンッと逃げられてしまいます。

 指紋部で広くこりを捉えるには、肘を伸ばし肩関節を内旋させ、皮膚を捉えたまま四指を母指に寄せてくることによってを手首を立て、体重移動による垂直圧ができるようになります。

 これだけでは体の虚実に対応できないので、弱い刺激を的確にできるような繊細な感覚を磨き、眠りの妨げにならないような気持ちのいい施術ができるようにならなければ一人前とは言えません。

 「なるほどな」と思いました。

 鍼もタッチも刺激の法則は同じのようです。

 オリンピック体操の鞍馬や吊り輪などを見ても、倒立で静止する時は指圧の体重移動に似ています。

 中国武道の棒術も、体に近いところを通るように棒を操って、野球の流し打ちのようなインサイドアウトの動線を作り出しています。これもタッチに応用できる動きです。しならせながら伸びる関節からは、体の遠くで棒を操作するよりも正確で大きな力が出ます。

 タッチ以外のスポーツや武道から、タッチの本質を感じることがたくさんあります。風に揺れる木立や波のリズムもまたインスピレーションを与えてくれます。

 広い視野で感受性を刺激しておくと、きっと役に立つことがあります。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年8月 9日 (土)

頭の検査の後に指圧に来た人

 「朝起きたら右の頚の痛み、右手のしびれ、右腰から足先の痛みがあって、脳神経内科でCTとMRIの検査を受けてきた」という70代の男性、幸い異常は見つからず、神経の伝達を助けるビタミンB12を投薬された後、指圧にいらっしゃいました。

 会話の内容は論理的で、発語も明瞭、全身を触って麻痺はありません。

 右脊柱起立筋がギックリ腰の時のように平板に硬くなっています。骨盤上部外側の右中殿筋と右大腿二頭筋上部外側に強い圧痛があります。筋肉が小さく避けているような痛がり方です。

 右坐骨神経に沿ったしびれが足先までありますが、脳梗塞後遺症の方のように、足首が硬くなっているようなことはありません。

 猛暑で夜は寝苦しく睡眠は途切れがちで、毎日大量に汗をかくということです。

 『筋肉の脱水』という感触を持ちました。大量の発汗によっていつも負担をかけている筋肉が硬く拘縮し、限界を超えて一部に断裂が起こったのではないかと思いました(この男性は毎日仕事で車を運転するので、座位での右股関節外転外旋姿勢が常になっています)。

 その痛みの刺激が脊髄を介して上行し、脊柱起立筋を板のように硬くしたようです。

 背部から下肢にかけて丹念に軽圧を繰り返しました。後半は眠り、リラックスできたはずですが、右臀部仙骨周囲から大腿後側にかけての痛みが残りました。

 おそらくこれは筋肉の断裂です。3日はかなり痛いと思います。

 傷が塞がっていけば痛みは軽くなっていくと思います。

 脳神経内科では『これは整形外科だよ』と言われたそうです。整形外科に行っていたとしても湿布と痛み止めが処方されるくらいで『マッサージにでも行ってきなさい』と言われたかもしれません。

 私も指圧、マッサージの適応症状だと思いました。喉が渇く前に水分を摂ること、それに栄養と休養が必要です。

 『猛暑の中、肌に触れられるのは嫌だろう』と思っていたので、今までは8月が暇でも納得していたのですが、この夏は例年以上に指圧をしています。

 私も今年は“脱水で筋肉が硬くならないように指圧、マッサージをすること”に、意味を見出しました。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年8月 8日 (金)

タッチを学ぶということ

 タッチを学びたいという相談を受けました。

 妊娠・出産を望む時期でもあるようで、あんま・指圧・マッサージの学校で学びたいという希望はあるのですが、その3年間の途中で休学するようになると大変だという思いもあるようです。

 私はタッチを学ぶことは何才からでもできると思っているので、妊娠・出産の後から学校に通えばいいと思うのですが、“タッチの可能性を感じた”“情熱に火がついた”ということなのでしょう。

 アロマや整体や他のもう少し短い期間で学ぶことができる手技療法も考えてみたようですが、私の学んだ日本指圧学校に見学に行って、雰囲気がとても気にいったようです。

 良いお手本となる人がいて、感動があって、理論がしっかりしているなら、どこでどのようなタッチを学んでも価値があります。

 難しいのはその先、理論を自分の言葉に咀嚼して、タッチに自分の気を乗せていくこと、そしてクライアントの気配を感じてタッチを合わせていくこと、これでいいという正解が一つであることはありません。

 マニュアルを学ぶことは単調で、曖昧な表現の中に極意があり、突き詰めていけば、その曖昧にしか表現できない極意の中の真理が自分の感性に響いた人でないとセラピストとしての成長は難しいでしょう。

 私がきっかけとなって、タッチやアロマに可能性を感じたのだとしたら、一つだけ言えることがあります。

 それは『面白いと思う方向に進む』ということです。何とかなります。

 タッチやアロマのど真ん中を進めば、もっと健康になります。妊娠・出産と3年という学校のタイミングが見事にバランスが取れることだってあると思います。

 そしていつからどのようにタッチを学んでも、その本質がわかってくれば、その後退屈することはなくなります。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年8月 7日 (木)

腱鞘炎(ばね指)のツボとアロマ

 昨日は飯能の生活の木・薬草香園で『腱鞘炎(ばね指)のツボとアロマ』というテーマで実技の講座をしてきました。

 腱鞘炎は、硬い腱と腱を骨に固定する靭帯性腱鞘にこすられて、腱を覆う柔らかい滑膜性腱鞘に起こる炎症です。

 腱鞘炎は腱のあるところならどこにでも起こる可能性がありますが、手掌の指の付け根付近に起こり、弾発現象を伴う重い腱鞘炎を“ばね指”と呼びます。

 弾発現象とは、手掌側の屈筋腱の滑膜性腱鞘が腫れて硬結を作る時、指を伸ばそうとするとそれが引っかかり、その後弾かれたように伸展することです。

 腱鞘炎は妊娠後などのホルモンの影響もあると言われ、女性や高齢者に多く見られますが、使い過ぎが原因である事も多く、安静が症状改善の基本になります。

 講座ではこの炎症部位には触れないこととし、それより近位(手首寄り)の部位から求心性の施術をして、誘導作用により炎症の改善を目標としました。

 実技では遠心性の上肢の基本指圧と、求心性の施術では、生活の木で販売しているラベンダー・ボディパウダー(タルク、コーンスターチ配合)を使ったパウダーマッサージと、ローズマリ・シネオールをグレープシードオイルに希釈した濃度1%のオイルトリートメントを行いました。

 施術のポイントは手掌から手首を越えて前腕の屈筋に老廃物を流していくということです。

 強い痛みがある場合にこそ、気持ちのいい刺激を丹念に探していくタッチの工夫が重要になります。

 私は渦巻き状柔捏を『硬結を潰す手技』として教わりましたが、腱鞘炎の硬結にこれをやるのは間違っています。

 パウダーやオイルを使えば、硬結より近位の部位から母指の指紋部で皮膚を捉えて、手首を廻すことで柔捏風に進んでいくことが容易になります。

 夏の汗ばんだ皮膚には、サラッとしたパウダーや粘性の低いグレープシードなどのオイルが施術に適していると思います。

 ローズマリーは関節炎に使えるだけでなく、炎症のむくみの排出を助けるので腱鞘炎には使いやすい精油です。その意味ではジュニパーなども選択肢としてあると思います。

 上肢の施術だけでしたが、途中でトイレに行く人があり、手の甲にある腰腿点の指圧が足先に伝わる感覚を持った人がいました。

 力ではない、マニュアルではない、生身の人間と触覚で対話をするようにタッチをしていくこと、その経験をし、何かを感じていただけたとしたら、それはとても凄いことだと思います。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年8月 6日 (水)

老いの不安

 「肩甲骨が痛い。近所の方にいい先生がいると聞いたので…」と電話をかけてきたのは、70代後半の女性。足取りがふらついて見えます。

 新しいカルテを用意し問診を始めると、左胸の痛みが一番気になっているとのこと。

 頚は右にやや側屈し、背中は丸く硬くなっています。

 生年月日を尋ねると一度間違えて言い直しました。よく話しをしてみると、数年前に2回指圧をしています。

 何となくそんな気もしていたのですが、電話の応対で初めての方からしか聞かないフレーズが頭に刷り込まれていたので、思い出すまでに時間がかかりました。

 後でわかるのですが、古いカルテの生年月までは同じで、誕生日はまた違う日になっていました。

 高コレステロール血症と便秘の漢方薬を服用中とのことです。脈はしっかりしていて、冷えはありません。

 左胸には、背中の筋肉が拘縮し、胸椎の間隔が狭まって肋間神経痛が起きているようです。左肩上部のこりや上肢のしびれはなく、狭心症ではないと思います。

 伏臥位で肩甲間部の指圧をすると非常に硬くなっています。腰の筋肉のほうが緊張は少ないのですが、第3腰椎傍線の指圧でポキッと音がして椎間関節のズレが矯正されました。

 ほおっておけばギックリ腰になっていたかもしれません。肩甲間部は可動性が少ないうえ固まっているような状態なので、可動性のある腰が引っ張られてズレやすくなっています。

 足趾は内側を向いていて、タンスの角に足をよくぶつけるということです。右足の甲に内出血がありました。

 足が真っ直ぐに出ないため、自分の意識と部屋の角を曲がる時の足の動きが違っています。

 全身指圧後、肩甲間部から腰部の筋肉がストレッチされたため、肩甲骨の痛みと左胸の痛みはなくなりました。

 座位で上肢の前方挙上をしていくと、途中で「また痛くならないかと心配だと」仰います。

 「そんなことはないですよ」と、肩の外転の動きもやって、肩関節の可動性が拡がったことを感じていただきます。

 帰りがけに「私はボケていないですか?」と聞かれました。足の感覚が鈍くなったことにも不安を感じているようです。

 「この一時間半の間、ボケているとは思いませんでした。全身の指圧を時々続けていけば、自分の体を確認することができますし、血流の改善と一緒に神経の伝達もよくなります」と申し上げて、送り出しました。

 外で歩きながら靴のかかとを直す動作も上手いものだと思いました。

 そして以前のカルテと誕生日が違うことに気づくのですが、私が再診であることに気づかなかったのと同じ程度に、それは単に“忘れることもあること”と見ていいのではないかと思いました。

 名前は初めてではないような気がしたのですが…。

| | コメント (0) | トラックバック (1)

2008年8月 5日 (火)

汗腺のトレーニングとしての全身施術

 「疲れが溜まっている。顔以外からは汗をかかない。」という30代の女性。

 室内でエクササイズを始めたそうですが、色白でむくんでいるように見えます。

 施術をしていくと、下腿前側を圧して跡が残るというようなこともなく、エクササイズの効果か、体は締まっています。

 半袖で露出した前腕や後頚部などには冷えを感じます。

 耳も冷えを感じますが、これは正常で、顔からしか汗をかかないにしても、ひどいのぼせではないことがわかります。

 むくみは軽度なので、“冷えのぼせ”が顔からだけ汗をかく原因のようです。下腹部に古血の滞り“瘀血”があると考えられます。

 運動をしても他の人より汗が出始めるのが遅いという体質のようです。

 この場合は汗腺のトレーニングとして積極的に運動をするか、入浴で汗をかく習慣をつけるとよいのですが、どちらも苦手だということです。

 インドアのエクササイズでは硬い筋肉を作りやすく、運動の効果はあるようですが、汗腺の活性化や体型にはあまり反映されないようです。

 早朝か日が陰ってからのウォーキング、あるいは岩盤浴や風呂で汗をかくことがお勧めなのですが、苦手となれば効果があるのは全身性の指圧・マッサージです。

 白く見えた顔は仰臥位に移る時にはピンク色になり、上肢の指圧では胃腸が活発に動き始めました。

 胃腸が動くということは、副交感神経が優位になり血管が拡張したということです。

 眠れたということもよかったと思いますが、施術後は腕がうっすらと汗ばんでいました。

 紫外線を避けて外にできるだけ出ないという方は、インドアで運動をするしかありませんが、インドアの運動が有酸素運動になっていないと、硬い筋肉を作るだけになってしまいます。

 運動をしていて疲れる体というのは、運動がこりを作っていると言ってもいいと思います。

 暑い中、外で運動も勧められません。血液循環に滞りがあってむくみや脂肪を溜めている方には、全身性の指圧・マッサージが効果あります。施術後にうっすらと汗をかくくらいの運動効果もあります。 

 顔からしか汗をかかないというのは、代謝の効率が悪くなって太り始めているということです。疲れやすいという症状も重なっていたら、夏場は頻繁に指圧・マッサージに通うということも合理的なことだと思います。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年8月 4日 (月)

幻の滑車に吊られている感覚

 古武術家・甲野善紀さんが提唱する体の使い方に“釣瓶落としの理論”があります。

 『幻の滑車に吊られている感覚で、両足を地面につけて腰を落とした姿勢から、さらにお尻を落とす重さを利用して手で物を持ち上げる』というような体の使い方です。

 物を持ち上げる上肢に力を集中すると、体全体の力を利用することはできなくなります。

 これはタッチにも言えることです。手力、指力というのは安定した大きな力ではありません。

 この一年ほど、私は指圧の体重移動を『頭から背中が、上りのエスカレーターで移動している感覚』にしています。

 体幹の移動方向と、肩から伸びた上肢が垂直圧をかける方向はクロスします。

 この時の幻の滑車は、頭の遙か斜め上前方にあります。

 背中を借りてプッシュアップで起き上がることこそ垂直圧だと感じています。

 圧し込んでしまうと滑車の動線が乱れます。

 幻の滑車はアロマオイルマッサージの軽擦にも応用できます。

 軽擦の場合は滑車が腰のあたりにあると考えて、骨盤の上前腸骨棘と手掌が同時に前に滑るような感覚になります。

 腰のやや上空にコンパスの頂点があって、前の棒だけが開いていくような感覚です。

 陰陽という太極の考えからも、一方に進もうと頑張るとかえってブレーキがかかってしまうということがあるように思います。

 進みたい方向にだけ力を向けるよりも、支点を作って力の方向を変えるイメージができると、余裕を持って大きな力が出せるようになります。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年8月 3日 (日)

翼の付け根・胸腸肋筋の硬結

 広背筋と肩甲骨、それと伸ばした上肢がはばたけば、それは翼の動きです。

 人間は翼を体の前面に固定し、肘を曲げて手仕事をしていると言えます。

 翼の付け根に硬結がある30代の女性、初めは骨かと思いました。それほどに硬い。ここまでのテンションになる前に、筋肉が断裂してしまうのが普通ではないかと思いました。

 胸最長筋にしては肩甲骨に寄り過ぎています。

 肉腫のような悪性のものではないかとも思いました。硬いにしても骨と間違う程の硬さは滅多にありません。

 熱や水疱の感触はなかったので軽圧を繰り返し、「全身の指圧が終わってここが緩んでいなかったら、肌を見せてください」と言って臀部から下肢、そして仰臥の指圧と続けていきました。

 腫瘍のようなものであれば痛がるか、違う感触があるはずだと考えました。痛がりもせずウトウトしていたようなので、同じ姿勢で腕を使い続けて独自の仕事の筋肉をつけたというのが真相ではないかと思いました。

 広背筋の範囲でもありますが、塊りが上肢を翼として使う方向にできているので、胸腸肋筋の硬結のようです。

 全身指圧後、もう一度肩甲下部で肩甲骨から上腕骨頭に向かうライン上の硬結に母指を載せました。

 さっきまでとは違う、沈む感触があります。まだ硬さはありますが、これなら骨と間違う硬さではありません。

 女性としては筋肉が発達しているのですが、今日は肩甲骨外側で腋窩外側にむくみがあり皮膚が垂れています。脇腹にもむくみ、たるみがあります。

 エアコンの効いた環境でのパソコンワークで上肢内転内旋姿勢を続け、汗をかかないことも筋肉の硬結を強めたようです。

 施術後、体が軽くなったということなので今日の施術はこれでよしとしました。体力があるからこそ、硬い筋肉のこりになるまで耐えられるという一例です。だから本人自身の体の中に調整する力もあると考えて、施術の深追いをするべきではないと思います。

 この一週間で指圧をした方々は、猛暑の影響で筋肉の状態がいつもよりも悪くなっていると感じました。

 疲れは筋肉の硬さ、水の代謝の滞りとして体の様々な部位の不調になっています。

 イメージなのですが、ビタミンCの不足した筋肉を圧しているような一週間でした。

 夏バテ対策として、自ら汗をかくことと、ビタミンCを積極的に摂ることは必要だと思います。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年8月 2日 (土)

痛み(主訴)は移動する

 ベッドから落ちて右肩前部を打った女性の主訴が、腕を前に上げられないことから、後ろへ廻せないことに変わりました。

 腋窩から肩甲下筋を圧した痛みが前回ほどなくなり、内転・内旋筋よりも外転・外旋筋が施術対象となってきたことがわかります。

 「ベッドから落ちて肩を打ったために起きた症状は、前回の施術の時も、もう治っていたのかもしれません。

 「以前から肩を後ろに廻しにくかった」ということは、今回初めてうかがいましたが、前回も棘下筋・小円筋などの硬結を施術対象と診ていたので、五十肩の症状は以前からあっただろうと考えていました。

 急性の症状は今回のように一回の指圧で仕上げの改善がなされることが多く、慢性の症状がその後に浮き上がってくることがあります。

 体を総合的に診ていかないと、主訴に隠れた肩が上がらないより重要なポイントを見逃してしまいます。

 この女性の場合は、座位で腰が左に回旋し、頚が右に回旋する姿勢が常になっています。

 左肩が下がり、右肩が少し前に出ていることも矯正していかなければなりません。

 「正中線に対して左右対称になるようにどのように近づけていくか」ということがボディメイクの目指すところですが、無理に矯正すれば体は傷みます。

 猫背の人は猫背が楽になっている、しかしそれでは体はどんどん傷んでいきます。

 この矯正を加減しながら進めていく過程で痛みは移動します。

 クライアントの刺激の受け皿を測りながら施術をしていく、その加減こそがセラピストの能力を示します。

 この女性とのボディメイクのセッションは、二回目の施術から次の段階に順調に移行したと言えます。

 もし手技療法の正道を一つ上げるなら、この例のように主訴を越えたボディメイクのレールを引いて、一緒に旅をするパートナーとなることです。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年8月 1日 (金)

中指は外転しかしない

 指の動きは、手掌側への屈曲と手背側への伸展、そのほかに中指を中心として離れていくのが外転、近づけていき指の間隔を閉じるのが内転です。

 中心となる中指は、示指側に傾けても薬指側に傾けても外転で、内転はありません。

 母指、示指、小指は独立した伸筋を持ちますが、中指と薬指は独自の伸筋を持たないので、中指と薬指は動きの巧緻性という点では劣り、屈曲させて物をつかみ、その状態を固定させておく働きが重要であるようです。

 映画で拳銃を撃った後に、拳銃を握った指が離れず、一本一本伸ばしていくというシーンがあります。

 母指、示指と引き離しても、中指と薬指の働きによって、拳銃はまだ落ちません。

 指を巧みに使うことによって、人間は現代の文明や文化を実現してきました。

 構造的な指の中心としての中指は、どちらかといえば握ることに役割の重さがあるようです。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2008年7月 | トップページ | 2008年9月 »