前腕・指伸筋の痛みが上腕二頭筋下部に移行したケース
肘に近い、右前腕外側・指伸筋の痛みを訴える30代の女性、整形外科では「腱鞘炎ではないか」と言われたそうですが、そんな感じはしません。
この時期、印刷の仕事は年末進行で忙しく、ハサミを使って切り抜く作業が多いとのことです。
指圧でいうところの前腕外側1点目の指伸筋に強い痛みがあります。指伸筋を手首の方向に圧していくと2点目、3点目、と示指と中指が伸びるので、橈骨神経の麻痺などはないと思っていいでしょう。
また肘の橈側、大腸経の『曲池』にも圧痛があります。
伏臥位では右背部の上部広背筋と肩甲下部脊柱起立筋に頑固なこりがあります。右腕内転・内旋、体幹右側屈の姿勢でハサミを使っていたようです。
今までは少し安静にすれば治っていた症状だということです。30代といっても筋肉の衰え、体力の衰えはあるでしょう。また年齢的に女性ホルモンがピークであれば、筋肉を維持することは大変です。
全身指圧後、右肘周囲にローズマリー・シネオール+スイートアーモンドオイル(濃度1%)でアロマオイルマッサージをしました。
この時すでに、指伸筋の痛みと『曲池』の痛みはほとんどなくなっていました。
母指軽擦で探っていくと、肘を越えて上腕二頭筋の痛みが浮き上がってきました。
腱というよりも、力こぶの山の中腹くらいまでの筋肉に痛みが集中しています。
『肘を曲げていたこと!』、ここまできて、痛みの原因が明らかになってきました。
ハサミを使うたびに、曲げていた肘に力が加わり、上腕二頭筋下部が等尺性収縮のような運動を続けていたわけです。
母指軽擦から強擦に変え、上腕二頭筋の老廃物を流す意識でオイルマッサージをすると、5分もかからずに痛みは消失しました。
全身指圧をしているのでオイルマッサージの効果が短時間で発揮されたということは間違いありません。
ローズマリーが浸透し、時間をかけてさらに筋肉痛を和らげてくれることでしょう。
クライアントの主訴や病院での治療を参考に施術をしていいのですが、それだけでは今回のように上腕二頭筋の痛みを見つけることはできません。
指圧で主訴の部位は治療され、痛みが上部に移っていったと考えることもできます。
①『言われないとやらない』、②『言われたことをやる』、③『主訴の部位から周囲まで広く探ってすべてゆるめる』、私は③ができるセラピストが増えてほしいと思います。
③の施術ができるようになるには、“フワッと触れて感触を確かめる”しかないと思います。
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