夜9時過ぎ、急性腰痛の電話。
先週は腰痛の指圧が多い週でした。
忙しい一日が終わったと思ったら、9時を過ぎた頃、「今から指圧はお願いできませんよね…」というネガティブさの中にも有無を言わせない感じの電話がかかってきました。
「肩が張ってきてめまいがしそうで眠れそうもない…」
「わかりました」
救急外来ではなく、明日整形外科へ行くでもなく、今おまえがやれと御指名をされたわけです。
電気をつけエアコンをつけ音楽をかけアロマミストを焚いて、こんな時考えるのは終わったらシャワーでいいか、もう一度風呂に入りなおすか、下着はかえるようだな、などジクジク考えながら次第に指圧のセンセイの役作りに入っていきます。
やってきたのは70代の女性、もう何度も時間外の急患としてここへ来ました。
へっぴり腰で玄関を上がり、腰が悪いのがわかります。
日中法事で、同じ姿勢で話し込んで、夜になって体の向きを変えるのもままならず悶々としてパニック寸前の状態まで行ってしまったようです。
私が診るに左腰上部筋のいわゆるギックリ腰が、肩、頚から上、そして足先まで響いているようです。
この方は自分を追い込む天才なので、何とか誤魔化してでも安心させていかなければなりません。
以前これは指圧では無理だと言ったとたん、突然症状が重く動けなくなり、家族に連れられて行った救急外来では異常なしと言われ、結局湿布と鎮痛剤をもらって帰ってきたという、苦い経験があります。
めまいがしそうだということなので、どの姿勢ならできるかと聞くと、足を投げ出した座位になりました。
左第一腰椎外側のあたりに軽く触れても痛い部分があり、おそらく軽い肉離れのような状態です。
誤魔化して横臥位になってもらうと左を下にしたいようなので、やはり左が悪いことがわかります。これは圧迫側の血圧降下、血管拡張、鎮痛という圧発汗反射からも明らかです。
座位、横臥位と指圧をすると、何とか仰臥位も可能になります。
「肩がこってるでしょう?」と聞かれますが、それほどはこっていないのですが、とりあえずこれも誤魔化して「大変だったねぇ」などと合わせます。
大事なのは心理的な満足感で、肯定、肯定でいって、少しでも気分を害さないように盛り上げておきます。
鎮痛のためなら、超調子のいいことを言うのも平気です。そのあたりはセラピストは役者でなけらばいけないと思っています。
誤魔化し誤魔化し、何とか仰臥位もできるようになり、一時間の指圧でとりあえずめまいのおそれは消え、左腰に痛みはあるものの通常の動作は可能になりました。
しかし、ここから帰らない。
頚を一杯に回旋してみて、「ここまで曲げると頚が震えだす」だとか、余計なことをやらかしてくれます。
頚椎症もあり、腰の変形もあり、無理をすればすぐに肩がこって頭への血流が滞り、腰痛になります。
ちょと歯を喰いしばって「震えるトコまで曲げなくていいんだよぉ」ともう自分チのバァさんのようにあしらいながら、家族の迎えを待ちます。
念のため翌日も指圧に来ましたがすごく良くなっていて、「昨日は眠れなかったでしょう?」と尋ねると「よく眠れた」とのことです。
エネルギーの再点火で、結局眠れなくなったのは私のほうでした。
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