ホテルの柔らかいベッドでの指圧が大変だった話。
毎週指圧をすれば何とか脊柱管狭窄症の症状が抑えられて仕事ができるというお得意様の男性、諸事情あってウチまで来ていただくのではなく、ホテルにこちらから出かけることになりました。
毎週ホテルに泊まってまでウチに指圧に来ていただいていましたから、前回の疲れきった姿を見るにつけ、出張やむを得ずという気持ちになりました。
積極的に出張の指圧をしないのは、舞台装置が整わないアウェイ感の中でのタッチは自分が提供できる演出のレベルからしてかなり残念に思うからで、一見のお客様にはほとんどしません。
小雪舞う暗くなった頃にホテルに着き、受付には連絡をしていただいていたので丁寧に部屋を教えていただきました。
『どのツラ下げてロビーを通過すればいいか?』、これが結構胸を痛めておきたい問題で、普段から指圧の先生も演じていますから、出張マッサージさんの典型を演じたいところなのですが、先生ヅラするのも、卑屈になるのもどうかと思う間もなく、エレベーターで部屋に到着です。
『なるほどここで指圧をするか…』
一本の吸い終わったタバコが灰皿に…、これで持ってきた精油の出番はなしに決めました。
「テレビつけといてもいい?」と聞かれたので、「いいですよ」と。BGMは民主党のニュースです、やれやれ…。
「手から薬が出なければいかん!手が冷えていてはいかん!」とどこからか大いなるものの声が聴こえてくるので、着ぶくれて、手にカイロで、完全装備で来たのですが、うぅーんチープな、あるいはカジュアルな、舞台装置で指圧が始まります。
持参した消毒液で手を擦り合わせ、いざ…。
ホテルのベッドはヘッドポジションから圧せないので、まず足の側に頭を持ってきていただいて伏臥位になってもらいます。
するとベッドメイキングで、シーツやら毛布やらがマットの下に潜り込んでいてややこしく…。
ここまでの前段はどうでもいいことなのですが、指圧をするとベッドが柔らかすぎて体が沈みます。
そしてウチでは感じたことのない背中の硬さを感じました。
つまり、ベッドなりマットなり体を受け止める下の部分にある程度の硬さがないと、背中の硬さを支えとしてプッシュアップで静止することができないから、いつまでたっても硬さを圧し続けて沈む感覚になります。
『これは大変だ…』、普段どんな素晴らしい環境で指圧をしていたか、アウェイに来て気づきます。タバコの臭いの部屋と民主党のニュース、やれやれ…。
『出張マッサージの人は大変なんだなぁ』とやってみて実感します。
しかし、大学病院の病室で教授の回診中でも、寝たきりの方の介護ベッドでも、猫の入ってくるお宅でも、小さいお子さんとお話しながらでも(このあたりはみんな得意分野なのです)指圧をしてきたので、柔らかいベッドでもそのうち体重を乗せるタイミングを見つけ出しました。
終わってみれば、結構いい仕事ができるもんだと、意外に何てことなかったかなぁ…。
帰りにはホテルの受付にフルーツのお土産まで用意されていて、小雪舞う夜の帰り道、車を運転しながら『こういうのもできなくもないねぇ』などと思いました。こんなことですごく喜んでくれる人がいるのだから。
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