ケンタさんから質問をいただいた「脊柱起立筋の緩め方」について、私の考え方をまとめてみたいと思います。
脊柱起立筋は仙骨から側頭骨の乳様突起までの脊柱の両側にあって、①仙骨部②肩甲下部③肩甲間部④頚部、と私は分けて考えています。
作用は頭部と脊柱の「背屈、側屈、回旋」です。指圧の時は単純に“後ろに反らせる筋肉”とイメージしています。
おそらく誰もがやっているだろうことは、脊柱の両側の背部兪穴にあたる最も硬いラインを圧すことです。
硬さに対して力でぶつかれば、血管や筋肉は緊張して収縮します。これでは筋肉は緩みません。
なかなか緩まないからもっと良い方法はないかという御質問ではないかと思いますので、ここからがポイントになります。
脊柱起立筋のこりに対して力でぶつからない、理論的で気持ちの良い刺激の指圧をした上で、以下のことをプラスすればより効果的です。
ポイント① まず『脊柱起立筋の溝を切る』ことを考えてみましょう。
脊柱に対して両母指の先端を合わせて平行に使い、第5腰椎のあたりから肩まで、最長筋の内縁を、溝を切るように両母指の指紋部で軽い圧をかけていきます。頚部には繊細なタッチが必要なので、私はこれを肩までにしています。
ここではロッキングのように筋肉を圧しながら揺らすようなことはしません。
こっていることはまずない最長筋の内側を、溝を切ることで緩め、他の筋肉との癒着をはがしていきます。最長筋の外側には癒着感がないことが多いので、溝を切ることはほとんどありません。
ポイント② 脊柱起立筋は上や横や下に収縮する筋肉の“下”にあります。
頚部では『肩甲骨を引き上げるために上に収縮する』僧帽筋や肩甲挙筋、肩甲間部では『肩甲骨を脊柱に寄せるために斜め上に収縮する』大、小菱形筋など、肩甲下部では『肩を後方に引き内転・内旋させるために斜め下に収縮する』広背筋などに覆われています。
引き上げる筋肉は引き下げる方向に、寄せる筋肉は離す方向に、引き下げる筋肉は引き上げる方向に、手掌で軽擦することで、脊柱起立筋が受けている締め付けを緩めることができます。
もちろん使わな過ぎの硬さもありますので、そうであれば手掌を当ててから皮膚の表面はとらえたまま収縮方向と伸展方向に手掌ロッキング(揺らします)をかけていきます。力は入れません。
猫背だと脊柱起立筋には使っていない部分もあるはずです。
頭の重さや上肢の重さでこっている場合は使わな過ぎなので、私は3指で指頭ロッキングを脊柱起立筋に、筋肉の線維をねじらないように縦にしていきます。
この考え方があると脊柱起立筋の硬さと力でぶつからずに、気持ちの良い圧で脊柱起立筋のこりに母指の指紋部を乗せているだけでも、浅背筋群などを緩めることで脊柱起立筋が緩むというイメージがわかっていただけるのではないかと思います。
「協力筋や拮抗筋を緩める」、「こりの中心をはずす」、「筋肉の起始と停止を刺激する」、「緩めようとする筋肉の拮抗筋のエクササイズは、緩めようとする筋肉のストレッチになる」、これらのことを念頭に、私はよりマイルドな指圧ができないかといつも考えています。
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