「30代女性、子供の服を脱がした時にぎっくり腰になりました」
これだからぎっくり腰は油断ができません。顔を洗う動作のような体幹の屈曲だけでなく、体幹の軽い屈曲から伸展する動作でもぎっくり腰は発症します。
前夜の発症で翌日指圧をすることになりました。
ぎっくり腰は基本的に安静にして冷やすことが大切で、それで納得していただければ指圧を断ることにしています。
しかし、普通はそれがぎっくり腰かどうか本人には判断できないものです。
病院が休みだ、不安なのでどうしても診てもらいたい、前にオマエが治した時と同じような状態だ、などと言われると、やはり指圧の出し惜しみもできません。
今回のケースは玄関から歩いてくる姿勢や座位での触診、マットに横になる時のかばい方などから、ごく軽い傷ですんでいそうなことがわかりました。
「急性腰痛は仰臥位で腹部から」、これが痛みを緩和するポイントです。
腰とマットの間に隙間がないかを見て、両膝は軽度屈曲にするため膝枕を入れます。
まず始めに、両膝を持ってゆっくりと股関節を屈曲させていき、膝をおなかに近づけていきます。
この時に血管を収縮させないために必ず息を吐いてもらいます。
両膝をくっつけて股関節を屈曲したあとに、両膝を開いてさらに股関節の屈曲を行います。
膝を開いたほうが腰椎の前弯矯正としての効果が大きいのですが、マイルドなほうから行うことが大切です。
ここでプロとして注意事項は、屈曲で痛みを出さないようにどこでも止められるように慎重に行うことと、伸展の時にも痛みが出ることを忘れないことです。
この伸展で痛みを感じさせてしまうのはうっかりしがちなミスなので十分に注意します。
この股関節の動きで痛みがあれば、腸腰筋の傷によるぎっくり腰ということが多いので、その判断をもとに指圧をしていきます。
腹部は手掌圧で腹筋の緊張を診ます。今回も腹筋が緊張していたので、体幹を屈曲させる腸腰筋をかばって腹筋を使ったということが考えられます。
腸腰筋はおなかのほうから圧をかけて緩める感覚で、腹筋の緊張を緩めることは腸腰筋の緊張を緩めるとイメージしながら、手掌圧に続いて腹部の基本指圧をしていきます。
これは腰椎前弯の矯正と内臓を上げていくということでもあります。
下肢、上肢、頭部顔面、前胸部と仰臥の指圧をして伏臥に移ります。
この時の体位変換も比較的楽にできたので、協力筋を緩めれば患部の血行促進につながることをイメージして伏臥位の指圧をしていきます。
この場合の協力筋は全身と考えます。
左第4~5腰椎付近の軽い指圧で痛みがあります。
これを今までのデータから腸腰筋に頭が行くか、起立筋の痛みと思って終わるかで、結局そのセラピストの力が試されます。
中殿筋、梨状筋、下肢後側の坐骨神経領域までの痛みの派生はありませんでした。
最後に股関節屈曲のストレッチをもう一回行って、立ち上がった時にはそれまで感じていた痛みは再現されませんでした。
今回はおそらく傷が小さかったので協力筋を緩めることで、傷口が塞がるくらいの幸運なケースです。
ただまだ傷はあります。昨夜は湿布をして寝て、寝ていても痛みがあったような傷です。重いものを持ったり、子供さんの抱っこをする時には要注意です。
本人の対処もよく、指圧も効果がありました。
いつもこのような軽いケースばかりではありませんが、丁寧に対処すれば体位変換もままならないようなケースでも血行促進によって痛みが緩和し回復が早まることはよくあります。
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