昨日はアポなしで指圧にいらした70代の男性がいました。
通りから入っているのでアポなし、紹介なしのお客様は珍しく、指圧中だったので「30分は待っていただくようですが」と申し上げても「待つ」とのこと、大汗と大きなバッグが印象的でしたが、もうすぐ指圧が終わるという時になって、「用事がある」と名刺を求めてから帰っていかれました。
その後電話があり、料金などを尋ねてから予約の空いていた5時から指圧をすることになりました。
15分も早くいらっしゃったので、非常に調子が悪いのだろうと思いました。
着替えを持ってきていて汗をかいたシャツを着替えるところなどは、慣れた感じを受けます。
ただあまりいい評判を聞かない手技療法の店に通っていたとのことなので、甘く見ていました。
主訴は頚の痛みと肩こりです。
前頭部を転倒して打ってから頚に痛みがあるとのこと、顎がやや上がり気味で頚を右側屈すると左側頚部に痛みがあり、頚椎の変形と項縦靭帯硬化症を疑います。
脈を診ると5秒に1回脈が跳びます。
降圧薬を30年来服用しているとのこと、狭心症や不整脈にも効果があるタイプの薬が処方されているのでしょう。
腹部肥満と内臓下垂があり、コレステロール値、血糖値ともに高いということなので、動脈硬化が進んだ状態にあると思いました。
指圧中、汗が引いてくると寒がったのでエアコンの温度を上げました。
これは糖尿病や高血圧の人で動脈硬化が進んだ人ではよくあることです。
仰臥位で指圧中に目を覆ったガーゼを自ら取ったので表情を見ることができましたが、目を開きながら眠っているような様子で、命の炎の弱さのようなものを感じました。
全身指圧が終わって椅子に移っても顎はやや上がっています。
肩こりは緩んでいますが、頚には変形があってストッパーがかかっているようです。
しかし突然元気になったようで「亡くなった〇△先生の奥さんの指圧を受けたことがあったが、ズンと響く指圧だった」と話を始めます。
『指圧ミシュラン調査員か?』
一瞬、冷たい嫌な感覚に支配されました。
暗に『オマエの指圧はズンと響かない、二流だ!』と言われたようですが、はたしてズンと圧せたでしょうか?
おそらく、その指圧に期待する思いをうかがって指圧をしても、非常にはかなく感じた体を1、2、3と圧し込む指圧はできなかったでしょう。
おまけに朝から食事をしていないということがわかりました。
脈をとってもやはり5回に1回は跳びます。
大動脈瘤が破裂した方はこんな感じでした。
大動脈瘤なら、指圧の相対禁忌症(指圧をしても効果がないか悪化させるおそれがある)です。
期待した指圧の満足感は得られなかったかもしれません。
しかし、来た時よりは明らかに意志を伝えるパワーがあるように感じます。
今日さらに快適になっていれば、それが1、2、3と圧し込む指圧よりも私が上等だと考える物足りないくらいの適量刺激の指圧です。
本当にお客様に満足していただくタッチは難しいと思います。
今やり直してもマイルドなタッチを選ぶと思いますが、久々に襟を正される思いをしました。
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