“30代後半の男性、1週間ほど前、咳が続いた後に左腰部から殿部に強い痛みを感じ、現在はトラックのクラッチペダルを踏み込む時に、左下肢伸展痛があります。”
このケースでは咳はきっかけに過ぎず、それまでに左の腰の緊張は限界に近づいていたと考えられます。
座位では脊柱が左側弯し、左腰部背柱起立筋の短縮が診られます。
左腰部から殿部、そして左下肢伸展痛があるということですから、第4腰神経から第3仙骨神経までの坐骨神経領域の問題をまず考えます。
問診で車の運転やデスクワークで悪化することがわかったので、座位姿勢で負担になる左腸腰筋の傷を頭に置いて指圧を始めます。
伸展痛は、治りかけで患部が動かせるようになった時に多くなる訴えです。
痛みを防ぐための姿勢は軽度屈曲ですから、この1週間の間、左腸腰筋の働きである左股関節を大きく曲げることも、しっかりと伸ばすこともしたくなかったはずです。
クラッチのある車では股関節を伸展気味に使うことになるので、クラッチ操作で痛みが出るのは納得です。
左腰部にはソフトなタッチで指圧を行い、患部に負担をかけないようにします。
筋肉がしっかりしていて、腸腰筋の傷だけを考えればよいケースでは、左大腿後側の坐骨神経のラインにやや強めの持続的な圧迫をして問題ありません。
坐骨神経の機能を停止(低下)させることによって鎮痛効果が期待できます。
その時に、大腿後側の中央のラインと外側に分かれる総腸骨神経のラインとを触診します。
足の使い方によってはセンターラインだけ指圧をしても効果が薄くなるので、ここはしっかり押さえておきたいポイントです。
全身指圧を終えた後には指圧の部位ごとのストレッチよりも、もう少し時間をかけて腰部のストレッチをしておきましょう。
腰椎回旋のストレッチでは、腰椎下部から骨盤内の患部によく響くのは、股関節最大屈曲で(膝を体幹につけるようにして)行うストレッチですが、これはNO GOODです。
痛みを再現してはいけません。
痛みを緩和するためには痛みを出さないように、しっかりとはストレッチしないことが肝心です。
そこで股関節屈曲90°前後で痛みの出ないギリギリを探っていきます。
最悪の場合なら膝伸展、股関節伸展でかかとを浮かせないで爪先を左右に動かすだけでも良しとします。
当然左腰部の回旋のストレッチ運動では右下肢伸展、上肢外転90°で顔は左に向けます。
この時の左股関節屈曲と左膝屈曲の角度にセラピストのセンスが現れますので、丁寧に行ってください。
そして下肢伸展挙上牽引でストレッチを終えました。
このケースは傷が治っていく途中の腰痛ですから、痛みが出ないように小さく動かしていくことが早い回復につながります。
座位姿勢の連続では腰痛の治りは悪いという意識を植え付けることも大切です。
簡単にできる腸腰筋のストレッチは後ろに股関節を大きく伸ばして歩くこと、それが圧倒的に足りなければ腰痛はまた起こります。
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