自覚的にはむくんでいる、しかし触ってそれほどでもないというケース。
「朝起きた時、ひどくむくんでいて手が使いづらい。だるくてやる気が出ない」という40代の女性、起きてからしばらく体を動かしていくと手は使えるようになり、むくみも減っていくようです。
まず、「更年期症状→エストロゲンの不足→むくみ、腱鞘炎」という図式が考えられます。
しかし、実際に触ってみるとほとんどむくんでいません。
夜勤明けの看護婦さんや妊婦さんと比べれば、全くむくんでいないと言ってもいいくらいです。
腎臓や心臓の問題は、普段からの問診状況と脈診、触診により考えなくていいと思います。
ということは、地震後の自律神経の乱れが更年期症状を一時的に悪化させているのかなという思いが強くなります。
後頚部から肩甲骨上角に停止する左右の肩甲挙筋のこりが強く、丸まっていた左第5趾を圧すと、正中線を通って眉間に響くというようなことがありました。
5趾の膀胱経のツボ「至陰」の刺激が背部を伝わるというより、腹部正中線の任脈を通って眉間に伝わる感覚があったようです。
これは「至陰」の刺激が子宮に伝わるので、逆子の治療に使われることを考えればわかりやすいかと思います。
「子宮を中心に体が全身的な緊張を持って、寝ている間にむくむ」というのが今回のケースではないかと思います。
むくみに癒し系のまったりとしたタッチは禁物と思って始めた指圧ですが、この体は緊張感に包まれていたので、癒し系のタッチに終始しました。
指圧後、肩甲挙筋のこりや左足全体の硬さがとれ、体全体が緩んだようです。
これは地震の精神的なパニックを肉体に封じ込めたために起きた症例だと思います。
(4月4日追記)
膀胱経の終点「至陰」の刺激が眉間にまで届いたという感覚は、膀胱経の流注を逆行して、眉毛内端の「攅竹」からおそらく膀胱経の出発点である内眼角の「睛明」まで届いたということです。
5趾先端から仙髄・腰髄を経て脳に触圧刺激が到達する感覚が背部に感じられるのではなく、腹部から胸部を上行するという受け手の感性が、気づきを与えてくれました。
背部から肋間を通って同じ高さの腹部に脊髄神経が分布するので、脊髄を上行する神経の伝達を体幹の前面に感じることがあるわけです。
また膀胱経の緊張が、寝ている時に体重のかかる背部の血行をさらに悪化させ、流注で続く腎経の停滞ももたらして朝のむくみが生じていると考えることもできます。
セラピストは受け手の感性に教えられて成長していきます。
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