80才女性、前日こたつで洋裁をして、朝起きたら右の頚から肩にかけて痛みが強く、不安になって指圧にいらっしゃいました。
年末から正月にかけては何かとあわただしいものですし、ここのところ寒さが強くなっているということも考えに入れて指圧を始めます。
座位の触診で、円背(老人性の骨粗鬆症に伴う強い猫背)と背部のこり、右側頚部から肩上部の痛みを伴うこり、右大胸筋と右鎖骨上部の筋肉痛を確認しました。
こたつで洋裁ですから長時間の座位姿勢と、右下の手元を見るために頭頚部は軽い前屈+やや右回旋していたと診ます。
頭の重さによって肩がこり、頚の右回旋によって右斜角筋群の緊張が持続しました。
右鎖骨上部が詰まり、手仕事による右肩関節内転内旋+肘屈曲くらいまでは公式のように一連の関係性を持って触知することができます。
よって大胸筋や腋窩の肩甲下筋は当然こっています。
ここでチェックすべきは“使わな過ぎ”の肩関節外転筋や外旋筋です。
高齢者は筋力が弱くなっているので、“使わな過ぎ”で筋肉が血行不良になって硬くなります。
このケースでも強い猫背の手仕事姿勢で伸びきった肩甲骨中部・下部の左右の棘下筋が痛みを伴う緊張を持っていました。
この棘下筋の痛みは主訴の反対側に位置するので意識に上ることがないということも覚えておくとよいでしょう。このような意識に上らない筋肉痛が主訴に加わって『頚と肩の不調』となっています。
セラピストが緩めるべきポイントは、こういう使わな過ぎの筋肉を動かすということです。
使い過ぎの筋肉を動かし過ぎては害になります。
状況としては洋裁によって目の疲れもあり、鎖骨周囲のこりがあって胸郭出口症候群の様相を呈し、本人が指圧を訪れた本意は『脳血管障害』を怖れてということを察してください。
手は冷えていました。
頚や肩関節周囲の血行不良を考えれば抹消の冷え、頭ののぼせが考えられます。
足を触って冷えはなかったのですが、本人は冷えを感じていました。
これは自律神経の異常を示しています。
円背で背部の緊張があれば交感神経が優位になっているということです。
また円背で仰臥位で寝ると頭が浮いてしまうくらいですから、頚痛の原因として枕が低かったのではないかということもお話ししておくべきです。
円背で仰臥位で寝るときはバンザイをすると背中が布団に着いて寝やすいということがあります。
この寒さでバンザイで寝れば肩が冷えて肩こりになります。
いろいろな状況を一応考えておきます。
全身指圧後、おなかが動き、内臓が上がって、背中はかなり伸びました。
背中を伸ばし過ぎてはいけないということも必ず覚えておいてください。
女性のセラピストでも乱暴なタイミングで強い刺激をすれば、骨粗鬆症の肋骨には簡単にヒビが入ります。
(施術前と比較すればかなり)良い姿勢を形状記憶させるような施術をしてください。
人間は省エネな体の使い方をするものです。
骨や筋肉の弱くなった高齢者は脊柱起立筋を使いたくないのだと考えておくべきです。
手仕事を同じ姿勢で長時間しないようにアドバイスし、また曲がったら、また良い姿勢を形状記憶させることの繰り返しです。
伸ばし過ぎない、正解は比較的良い姿勢に仕上げるということです。
指圧後、頚肩の痛みはほとんどなくなりました。
高齢者では運動会で急に走った時の様な筋肉痛がよく起こりますが、それほど強い動きをしていないことが多いのでよく緩むものです。
この方の場合は、以前に自転車から転倒して以来、頚椎症の症状が時々起きる、右母指の怪我以来、右母指の動きが時々悪くなるということもあります。
傷病歴からわかることだけでなく、骨粗鬆症があれば頚椎が現在進行形で変形していて頚痛の原因となっているかもしれません。
おそらく余程のことがない限り今後手術という選択はないと思いますから、それを申し上げることはしませんでしたが、そんなことも指圧をしながら考えました。
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