60代女性、右鼡径部から大腿内側に走る灼熱感のある痛み。
「60代女性、時々右鼡径部から大腿内側に灼熱感のある痛みが走る」ということです。
変形性股関節症か、坐骨神経痛や筋性の腰痛などの腰の問題か、閉塞性動脈硬化症か、鼡径ヘルニアのようなことか…?
まず問診で高血圧、糖尿病はないとのこと、しかし年齢的に女性ホルモンの減少と動脈硬化はあると診ます。
肩甲間部の緊張が強く、肩と背部の筋肉はこっていますが、腰椎は正常範囲の前弯を保っています。
伏臥位の指圧で坐骨神経に沿った強い痛みの訴えや、股関節・膝関節の運動で痛みは出ませんでした。
また、足の冷えもありませんでした。
鼡径部の支配神経はL1(第1腰神経)ですし、大腿内側の支配神経はL3までですから、L4~S3の坐骨神経の問題は除外できそうです。
仰臥位下肢の指圧では両鼡径動脈の脈が弱く、かすかに微妙な揺れを感じる程度でした。
そして右下肢外側の緊張が強く、右大腿内転筋群の衰えが顕著でした。
仰臥位の右股関節の運動でも痛みは出なかったので、変形性股関節症は除外できます。
指圧中はよく眠りました。
全身指圧後、鼡径部の脈はかなりはっきりしてきました。
しかし右鼡径部を自分で強く圧したくなるような違和感は残っているようです。
足の冷えもなく、100mくらいの歩行で止まりたくなるというようなことはないということなので、閉塞性動脈硬化症というまでのことではなさそうです。
事務の仕事で座位姿勢が多いということなので、右下肢外側の緊張、右内転筋の衰えから、おそらく鼡径靭帯にも緩みがあるのではないかと思います。
右鼡径靭帯の正常な張りがたわんで、右鼡径動脈とその下の閉鎖神経が圧迫され、鼡径部から内転筋に神経症状が起きる、あるいは腸も下がってきていて鼡径ヘルニア(脱腸)の前兆のようなことが起こっているのではないかと思いました。
以前にもこのようなケースで鼡径ヘルニアの手術をした方がいらっしゃいました。
しかしその方はなかなか鼡径ヘルニアの診断がつかなかったようです。
明らかに腸が飛び出してこなければ診断できないこともあるのでしょう。
いずれにしても内転筋群の使わな過ぎ、座位姿勢で股関節を開いて座ることに問題があると思いました。
クッションやゴムボールなどを大腿に挟んで内転筋を締める運動や、仕事の合間には座位で自分の両手首を挟む運動をすることをアドバイスさせていただきました。
骨盤底筋、靭帯、筋肉、使わなければ年齢とともに緩み、たわみ、それは血管や神経の圧迫となり、血流の勢いを弱める原因となります。
股関節を大きく使って歩くことが第一の解決策ですが、なかなかそれができないということなので、まずは内転筋のエクササイズをすることが骨盤底筋や鼡径靭帯を締めることにもつながります。
今後鼡径ヘルニアになるとは言い切れませんが、痛みが改善されず、今より強い痛みが出るようなら病院への受診が必要だと申し上げました。
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