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2012年6月 6日 (水)

右母趾屈曲痛+右下腿後側の痛み(シンスプリント)+大腿内外側痛、1分間に脈拍42。

 電話で奥様から聞いていたのは「足の痛みと大腿の痛み」です。

 本人(30代男性)に座位で問診をしながら触診をしていくと、右母趾には軽く屈曲させただけでも尋常ではない痛みがあります。

 ひどく腫れたようなことはないということでしたが、捻挫か骨折のレベルの痛みであることを頭に入れておきます。

 猫背で左肩甲下部の脊柱起立筋に強い緊張と痛みがありますが、腰痛や腰の張りははありません。筋肉は良く発達しています。

 伏臥位の指圧では、肩から背部、下肢後側に痛みを伴った強い筋緊張がありましたが、典型的な坐骨神経痛のようなものではなさそうです。

 仰臥位では大腿内外側に痛みを伴った強い筋緊張があり、大腿前側にも痛みを伴なう筋緊張がありました。

 足背・足底・中足骨を圧して痛がる様子はありませんでしたが、右母趾は軽く触れるだけにしました。

 上肢の指圧で橈骨動脈の脈拍が1分間に42でした。

 筋肉の発達や右母趾の屈曲痛、そしてそれをかばうような大腿の緊張などからスポーツのし過ぎに問題があることが想像されます。

 指圧の後でわかったのですが、7月に大会がある100kmマラソンの練習をしているとのこと、右下腿後側下部の内側に痛みがあることも、指圧の後で本人の口から聞きました

 普通の人が1分間に脈拍42であれば徐脈ですから治療が必要になりますが、マラソン選手の通常の脈拍は低いことが知られています。

 マラソン選手はトレーニングによって心肺機能が鍛えられて心臓が大きくなりますが病的な心臓肥大ではなく、これを「スポーツ心臓」と呼んでいます。

 持久力の必要なスポーツ選手の通常の脈拍は、鍛えられて大きくなったスポーツ心臓によって一般の人より低くなります。

 右下腿後側下部内側の痛みはマラソン選手に多い「シンスプリント(脛骨過労性骨膜炎)」でしょう。

 右母趾屈曲痛は疲労性骨折の可能性もあると思います。

 捻挫や屈筋腱の炎症だとしても、まずは安静、テーピングなどで固定して、走る練習をしないことが最善の治療法です。

 足のアーチの減弱がシンスプリントの原因となりますから、土踏まずのテーピングも有効です。

 長距離を走ることで、「母趾の屈曲→爪先で地面を蹴る→下腿後側の筋緊張」が繰り返され、脛骨下部の骨膜が擦れて炎症を起こしたのでしょう。

 大腿内外側の強い緊張は走る時に使われるだけでなく、下腿以下をかばうことの影響もありそうです。

 「治療法は練習を休んで安静にすることです」と私が言った時の彼のいたずらっ子のような笑顔から、おそらく7月の100kmマラソンに出場し、練習も休まないつもりであることを察しました。

 帰り際、玄関で靴を履く彼に、「痛みが強くなったら(レースを)棄権してください」とだけ忠告しておきました。

 この指圧の教訓を以下に記します。

① 奥さんの電話から想像できたこととはかなり違うことがある。

② 脈拍が40でもあわてない(マラソン選手かもしれない)。

③ (それシンスプリントだよ、早く言えよ)セラピストが問診で知りたい痛みを、本人が後から口にすることもある(シンスプリントは鈍痛であることが多いので、主訴とはならないこともあるのですね)。

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