娘さんの運動会の練習に付き合って、娘さんを抱き上げた時に腰を傷めた30代男性、受傷後5時間たって指圧にいらっしゃいました。
電話を受けた時には「安静にして冷やす」ことをお勧めしたのですが、痛みと不安が強く、連休中ですし、状態を確認し症状を少しでも改善するお役に立てればということで奥様の運転で来ていただくことにしました。
車から降りて玄関を上がってくる様子は「最悪の感じ」ではありません。
椅子にも座れました。
腰に巻いた腰痛ベルトははずしていただきました。
それまで家で横になっていたようですが、指圧に来るために激痛をこらえながらやっとのことで立ち上がって、車の乗り降りのため歩いたことで少し痛みが和らいだようです。
以前にも2回ぎっくり腰になったことがあるとのことでした。
仕事が車の整備だということなので、腰をかがめた作業は避けられないでしょう。
今日腰を傷める前に、腰の筋肉はパンパンに張っていたのだろうと思います。
座位で背骨の棘突起に触れても痛みはありません。
背部から腰を軽く圧しても痛みはありません。
これらのことから、ほぼヘルニアは除外でき、おそらく腸腰筋の挫傷が一番ありそうなことです。
仰臥位になっていただく時に痛みは出ましたが、息が止まるような激痛で動きが止まることはありませんでした。
膝を立てて左右にゆっくりと倒しても痛みはありません。
息を吐きながら股関節をやや開いて膝を胸に近づけていくこともできます。
腰に傷がありそうですが、広範囲に神経を刺激しない部位のようです。
膝裏にクッションを当て、両膝を30°ほど屈曲させた状態で腹部の手掌圧から指圧を始めます。
腰をかばうために腹筋の緊張があります。
運動不足とおなかが出てきていることも今回の腰痛の原因でしょう。
下肢の指圧では左大腿後側の緊張と右大腿外側の緊張が特徴的でした。
普段は左膝を曲げっぱなしで、右股関節は外に開いた状態が多いようです。
右股関節を内転する運動を狭い範囲でゆっくりしてみると、いくらか痛みがあるということでしたから、大きく動かすことはやめました。
上肢は左上腕二頭筋がパンパンに張っていました。
おそらく左膝の曲げっぱなしと同じく、左肘も屈曲に固定されて使われているのでしょう。
彼は右利きですから、左半身の使わな過ぎは頭に入れておきます。
さて、ここまでは急性腰痛の指圧としては相当タチのいいほうです。
普通はどの動きでも痛みが出て、こちらは冷や汗をかくような指圧になります。
「うつ伏せか横向きか、できる姿勢をとってください」と申し上げると、右を下にした横臥位に『激しい痛みで何度も動きを止めながら』姿勢を換えました。
これは意外で、全体的な様子からはもう少し痛みが出ないだろうと思っていました。
「傷があって、動きによっては激しい痛みが出る」という状態です。
右を下にしたということは、右に傷があるということがほとんどです。
体重の圧をかけることによって指圧と同じく患部には鎮痛効果が生じます。
肩から背部、腰部はこっていました。
しかし軽く指圧をすることで痛みはありませんでした。
左半身の指圧が終わり、激痛を伴う体位変換の後、右を上にした横臥位で指圧をしても強い痛みは再現されませんでした。
「背部から触れられる部位の問題ではない」ということです。
何とか伏臥位をとっていただき、下半身は伸ばし、上半身をゆっくりとプッシュアップで起こしていただきました(マッケンジー体操の一つですね)。
これでも痛みはほとんど出ません。
今度は上半身をマットにつけて、左下肢伸展挙上(+回旋も)運動をしてみました。これも痛みは出ません。
さて右は…。予想通り伏臥位の右下肢伸展挙上で強い痛みが再現されました。
右腸腰筋挫傷です。
指圧を終え、立っていただく時がまた一苦労で、クッションに手をついて上半身を起こして休憩、横のベッドに手をついて休憩、ベッドに腰掛けてしばらく休み、固まりながらも、何とか背中を伸ばして起き上がりました。
ベッドに腰掛けている時は猫背になりました。
座位や猫背は腰に悪いはずなのですが、体幹の屈曲でも伸展でも痛みが出るというのが傷がパックリ開いている時の特徴です。
軽度屈曲の楽な猫背姿勢をとるしかないわけです。
何とか立ち上がり、少し室内を歩いていただくと、次第に痛みが消えていきました。
しかし傷は開いています。
冷やすことと安静にすることが対策としては賢明な方法で、風呂で温めるのは厳禁です。
歩くと痛みは薄らぐようですが、積極的に歩くのは2~3日たってからのほうがいいでしょう。
ぎっくり腰の受傷後は朝起きた時に腰の筋肉が緊張していますから、いきなり起き上がらずに膝を立てて左右に揺らす運動や股関節の屈曲や回旋の運動をしてからゆっくりと余裕を持って起き上がります。
腰を曲げて顔を洗おうなどとはせず、しばらくは濡れタオルで拭くくらいでいいと思います。
2、3日は立ってシャワーを浴びるくらいにし、風呂で腰を温めないようにします。
腰痛ベルトで痛みが和らぐようなら、起きている時に腰痛ベルトをしていいのですが、いつまでも腰痛ベルトには頼らず、腹筋や背筋を使って腰をカバーするようにしていきます。
お迎えに玄関に飛び込んできたおじょうちゃんは、お母さんのおなかにいる頃からの知り合いです。
腰痛のきっかけになるくらい大きく重くなりました。といってもまだ4才ですが。
運動会、運動会の練習、無理をしないでください。
普段していない動きをすれば、簡単にアキレス腱を切ったり、腰を傷めたりすることがあります。
その後に仕事に支障をきたすくらいなら、「頑張っているフリ」をして上手に運動会を乗り切ってください。
最近のコメント