80代女性の腰痛、股関節の手術、胆嚢の手術、第4趾の発育不全との関係。
80代女性、主訴は腰痛です。
背中は丸くなり、カートを猫背で押すと楽、しばらく歩くと休みたくなるということですから「脊柱管狭窄症」が疑われます。
昨年、左股関節の人工関節置換手術を受けていて、O脚ですが、経過は順調のようです。
十数年前に胆石で胆嚢の摘出手術も受けていて、現在、降圧薬、睡眠薬、ビタミンE、胃薬を服用中です。
これらの処方薬の目的と合致するのが、血管を拡張し副交感神経を優位にする癒し系のタッチです。
80代の手関節周囲は使わな過ぎでむくんでいました。
雑巾が絞りにくくなっているということですから、女性ホルモンの減少による手関節周囲の詰まりがあり、腱鞘炎も考慮して指圧をしていきます。
バストマットを使えば伏臥位になっても痛みがない程度の腰の状態ですから、手術が必要なほどの神経の圧迫はなさそうです。
不眠があり、肩こりの自覚もありますが、頭はむくんでいません。
会話も流暢なので痴呆や脳血管障害の心配は今のところなさそうです。
カラオケのサークルで週に一回は歌っているということで、歌うことが体に良い影響をもたらしているのは間違いないでしょう。
背中や腰を指圧して痛みはありません(80代女性には骨粗しょう症はあるものとしてふわりと圧してくださいね)。
臀部から下肢は運動不足でむくんでいます。
しかし、自覚的なしびれや痛みなどの坐骨神経症状が乏しく、足が重だるいくらいの訴えでした。
それでも我慢が当たり前になっている人や、足の感覚が鈍くなっている人もいるので、それも考えに入れておきます。
膝関節は90°までしか曲がりません。
膝の周囲に水が溜まっていて、このケースでは膝痛が主訴でもいいくらいなのですが、本人は正座をしないことと、あまり長い距離を歩かないことで「膝の違和感は克服してしまった」ようです。
そしてこの指圧での注目点は問診で出てこなかった「第4趾の発育不全」です。
左第4趾は1関節の長さで骨の硬さが感じられず、右第4趾は1関節の長さですが軟骨くらいの硬さが感じられました。
問診で出なかったものですから、まず左第4趾の指圧で「この趾はどうされましたか?」とお聞きしました。
生まれてこのかた現在に至るまでコンプレックスだったのでしょう、生まれつきだということでしたが、こういう質問をした後は気まずい罪悪感がしばらく私の体を巡ります。
「手で言えば薬指ですから単独で使うことが最も少ない趾…」などとフォローしてはみたものの、「お産の時に子どもの趾が真っ先に気になった」と仰るほどですから、長年にわたるコンプレックスの深さが思いやられます。
車で連れてきてくれた娘さんはおそらく50代だろうと思われますが、左股関節には人工関節置換手術を受けていて、遺伝が趾には及ばなかったのは幸いですが、同じような病気に注意は必要です。
第4趾といえば胆経の経絡が終わる「足竅陰(あしきょういん)」があります。胆嚢摘出に至った胆石と第4趾との関連が頭をよぎります。
第4趾の短さ・弱さからO脚の原因が始まり、膝の変形、股関節の変形、そして腰の変形ということ起こってきたとも考えられます。
全身指圧後、仰臥位で膝を立てて左右に倒す腰の柔軟運動と、下肢伸展挙上のエクササイズ、肩のペットボトル体操を覚えていただきました。
安全に気持ち良く筋肉を動かすということを続けていけば、緩和される症状が増えていくはずです。
左の第4趾を触った時には80年の人生の中で「事故にあったか、怪我でもされたか」と思いましたが「生まれつき」という答えには冷やりとしました。
80代ともなれば、いろいろな症状や病歴を抱えているものと考えて対応しなければいけません。
問診に出てこなかった症状で冷やりとすることもあります。
この時のように待合室で娘さんが待っている場合には、私は娘さんにも聞いてもらうように、大きな声でお話をすることにしています。
家族の方にも現状を知っていただくことが大切ですし、待っている方も退屈させないようなサービス情報は随所に盛り込むようにしています。
ペットボトル体操を一緒にやっていただくように、娘さんにも教えさせていただきました。
「腰を90°に曲げ、テーブルなどに片手を置いて、ペットボトルの重さにまかせた自分の力に頼らない振り子運動をする」、こんなことでも正しい知識を複数の人が覚えて帰れば、より安全なリハビリができます。
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