80代男性、C型肝炎、リンパ腫、ふくらはぎがしびれる。
80代男性、主訴はふくらはぎのしびれです。
ずいぶん前に、C型肝炎のインターフェロン治療が辛くて途中でやめてしまったそうで、3年前にリンパ腫が見つかり手術をしたそうです。
幹細胞移植手術だったのかもしれません。
手術中に脳梗塞になったということで、一緒に来てくださった奥様から見せていただいた薬の手帳には、①血小板凝集抑制薬②降圧薬③抗高脂血症薬④前立腺肥大による排尿障害の薬⑤抗不安薬⑥消化性潰瘍治療薬⑦便秘薬が記載されていました。
ジェネリックが多かったので見慣れない薬ばかりで、薬を調べる作業も大変でしたが、インターネットでも簡単に調べられるので、この作業は指圧・マッサージでも是非行ってください。
最初に聞かれたことが「胃薬を自分の判断で2、3日止めてみたが、そのまま止めてもいいか」という相談だったのですが、「胃薬」と思っていたのが「便秘」の薬でした。
問診で便秘があるということですし、指圧師に薬を止める判断はできないので、主治医の先生に相談してくださいと申し上げました。
2回の血液検査の結果も見せていただきましたが、総コレステロールや肝機能を示す数値がやや高めだった他は血糖値も正常、総蛋白も正常で栄養状態もカロリーコントロールも安定しているようです。
主治医の先生の名前の前に、診療科目が造血器腫瘍科と記載されていました。
脈は120回/1分、頻脈です。
背中は猫背で左側頚部に強い緊張がありました。
右の脳梗塞だったということですから左に麻痺が来るということはありますが、内反尖足や左手の麻痺はありません。
仰臥位から指圧を始めるとO脚で膝がマットにつきません。
両膝が膨らんでいて膝の変形があります。特に右膝は伸びきらず、右大腿四頭筋が萎縮しています。
「膝は痛くないですか?」と尋ねても痛みはないということでしたが、指圧終盤になって30年前に両方の半月板の手術をしていたことがわかりました。
大腿から足にかけての象の足のようなひどいむくみはないので、末期の肝臓癌の患者さんとはかなり違う感じがします。
ふくらはぎのしびれには、就寝時に膝裏にバスタオルでも当てて、布団と膝の隙間をなくして寝ることが必要です。膝が浮いていれば寝ていても下肢は緊張し続けます。
指圧は高さ15cmくらいの足枕を膝裏に入れて行いました。
靴下は足首のゴムが両方とも切ってありました。
ゴムの締め付けが気になるようです。
リンパ腫の手術後は6週間入院して特にリハビリもなかったということですから、推測になりますが「手術以前から血液をサラサラにする薬」を飲んでいて、手術の前には出血傾向を抑えるためにその薬を止め、手術中に血管が詰まりやすくなることは折り込み済みの手術だったのかもしれません。
手術中に脳梗塞になってもすぐに処置ができたので後遺症がほとんどなかったということではないかと思います。
大腿四頭筋の抵抗運動をしてみたところ、明らかに右膝を伸ばす力が弱くなっています。
300mくらい歩くのがやっとだということですから、テーブルに手をついて爪先立つ運動やスクワットをすることを薦め、後でやっていただきました。
伏臥位では右肩甲骨が高くなっています。
手を使って足を使わない、特に右手を使う猫背の日常ということが想像できます。右肩から背部の緊張は右に位置するC型肝炎の肝臓の反射もあるのでしょう。
全身指圧後、椅子に座っていただくと背中が伸びて、左側頚部の緊張も緩和され、脈拍は96回/1分に下がりました。
目も耳も不自由はないということで、顔が黒かったり黄色かったりすることもなく、末期癌の方にあるような体臭もありません。
血管を拡げる薬が多いので、血管拡張によってだるい、体にエンジンがかからないというようなことはあると思います。
抗不安薬はおそらく不眠でも訴えた時に処方されたのではないかと思いますが、この薬の副作用にはしびれもあります。
薬の影響、運動不足、肝臓、リンパ腫、軽かったとはいっても脳梗塞の影響など、末梢神経の痺れの原因にはどれもがなりそうです。
おなかの指圧では特に痛いところもなく、肝臓の硬さもありませんでした。
たぶん御本人にはこの指圧の効果がよくわからなかったのではないかと思います。
リンパ腫の5年生存率を考えれば、素晴らしく治療効果の高い状態が続いているのではないかと思います。
御夫婦との会話の中ではリンパ腫が血液の癌であることを理解していないか主治医の先生に説明されたことを忘れてしまっているのではないかと感じました。
私があえてそれを言葉にするのはよくないと思いました。
外で働く職人さんだった御主人は道具の使い方が上手だったとみえて指の変形が全くありませんでした。
同じ手を使う職人として思わず誉め言葉が口から出たのですが「親方」はけげんな顔をしていました。
息子さんのお迎えの車が来るまで、どう診ても身長が縮んで猫背になっていることが気になった奥様の背中をサービスで伸ばしてみました。
仰向けに寝ていただくと亀がひっくり返ったみたいだったのでおかしいなと思ったら「圧迫骨折をして以来横向きにしか寝られない」とのこと。
垂直横臥位のストレッチをしておきましたが、この体で…、老々介護は大変です。
「もう迎えが来るから」と旦那様は帰り支度を始めてしまったので、そこそこのストレッチしかできませんでしたが、それでも奥様の背中は少し緩んだようです。
「次はいつ来たらいいか」とのお尋ねに、「これが効果ありそうだと思ったらいつでも来てください」と申し上げました。
考えどころ多彩な指圧でした。今日はぬるい温泉にゆっくりと浸かって、もう少し考えを整理してきます。
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