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2013年12月16日 (月)

仙骨上部中央の痛みが指圧をしていくうちに右腸腰筋の痛みに絞られた症例。

 40代女性、主訴は仙骨上部中央の痛みです。

 仙骨中央の痛みが主訴というケースは稀です。

 神経の出口である仙骨孔が中央より外に寄っているので、中央より母指一つ分外側の位置や、仙腸関節付近の痛みの訴えのほうが多いです。

 座位では腰椎の前弯は正常に診えましたが、腹筋が弱く、おなか周りに脂肪がついているため、後の伏臥位の指圧では腰椎前弯の増強、胸椎後弯の増強が明らかになります。

 仙骨上部の触診では第1仙骨中央を軽く触れて痛みを感じるようでした。

 仰臥位で股関節を閉じたまま膝屈曲で股関節を屈曲していくと「痛みが出そうな感じがする」ということでしたが、ゆっくりと曲げていけば強い痛みは出ませんでした。

 股関節を外転させて同じように股関節を屈曲していくと、右腰から仙骨周囲が「緊張してくる」ということでした。

 股関節の回旋でも右股関節回旋で「緊張が強くなり」、左股関節回旋では「患部に響く」ということでした。

 これらのことから仙骨上部中央の痛みは右腸腰筋の傷によるものという疑いが濃厚になりました。

 下肢の指圧では足先に冷えがありましたが、上肢の冷えはありませんでした。

 頭部、腹部の指圧で患部に響くようなことはありませんでした。

 伏臥位の指圧で背部の筋緊張を緩めると胸椎の後弯の増強は緩和されました。

 胸椎の後弯が矯正されると腰椎の前弯も緩和されていました。

 すると「仙骨上部中央の痛みは右に移動していました」。

 これが「深部痛は局在性に乏しい」ということです。

 つまり内臓の痛みや深い部位の筋肉の痛みは、痛みを感じている部位と患部は一致しないことがあるわけです。

 胸椎の後弯増強(つまり猫背)と、腹筋が使われずおなか周りに脂肪がついたことで、右手の使い過ぎで右腸腰筋の負担が大きくなっていて、限界を超えて強い痛みを感じるようになったということなのでしょう。

 時々右殿部から大腿後側の坐骨神経に沿って痛みが出ることがあったようですが、右大腿後側から足にかけて強い緊張はありませんでした。

 右下肢伸展挙上回旋は腸腰筋のストレッチになるので「痛みが出る」ことをふまえて、小さくゆっくりと動かしましたが「それでも患部が緊張してくる」ということでした。

 全身指圧、ストレッチ後、仙骨上部中央の痛みは消えていました。

 仙骨上部中央の痛みは「関連痛」です。

 ですからこの部位をゴリゴリ圧すことで施術を満足してしまったとしたら、症状緩和の施術としては不十分過ぎます。

 また仙骨上の痛みを筋肉で考えれば脊柱起立筋との鑑別が必要になります。

 このケースでは伏臥位で体幹を起こすマッケンジー体操でも、下肢伸展挙上回旋の腸腰筋のストレッチでも、仙骨上部の痛みは再現されなかったので、「背中を反らす脊柱起立筋が原因の痛みではない」と言えます。

 比較的小さい傷のようですから治りは早いと思います。

 痛みを再現させないように股関節を動かす、歩く、そしておなかを引っ込めて腹筋を使うことを意識すると回復が早まります。

 

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