50代女性、右下腹部の盲腸のあたりが3日目から痛くて指圧にいらっしゃいました。虫垂炎の手術は30年前にしています。
痛みは徐々に薄らいできたので病院ではなく「これは指圧かな」と、お得意様なのでそう思っていただけたようです。
玄関を上がってくる左足の動きが少し引きずるように見えました。
座位では姿勢を良くしようと意識し過ぎて反り腰気味です(ソムリエの仕事柄、猫背でいられないということがあります)。
問診では、従業員が休暇で数が足りない連休中にとても忙しい日があってその日から右下腹が痛くなったようです。
背部のこり、腹筋のゆるみ、内臓下垂による腸の圧迫ということはあります。
右下腹部の回盲部に多い病気といえば腸重積やクローン病があります。
腹部の触診では筋性防御で腹直筋が硬くなっているようなことはありません。腹膜炎のようなことはなさそうです。
手掌や3指で回盲部を軽く圧すと痛みがありますが、圧して離すと痛みが出る反跳痛はありません。
下痢や血便もないとのことです。
やや脈は速く1分間に96くらい、微熱があるように感じますが、急いで来たということもあります。
伏臥位で右下腹部の痛みはないことを確認して、後頭部から後頸部、背部と指圧をしていきます。
第4・5腰椎間の大腸兪は左右ともに痛みがあります。これは大腸の内臓反射だけでなく反り腰による腰痛もあると考えるべきでしょう。また時々足がしびれるということなので、坐骨神経症状も腰部の疲労によって起きています。
背部のこり、右肩のこり、右浪越圧点(中殿筋上)のこり、下肢のむくみに対して指圧をしていきます。
仰臥位で下肢の指圧では腎経右内踝外周のツボ「太渓」、「大鐘」に圧痛点がありました。これは坐骨神経の延長であり、むくみの反応点として考えればいいでしょう。
また右脾経第1趾内側爪根部のツボ「隠白」の指圧が右回盲部に響くとのことでした。
右脾経は鼡径部から盲腸、上行結腸の沿って上行し、隠白は急性胃腸炎の治療穴です。
上肢の指圧では以前痛めた左母指は軽く曲がったままになっていて、関節に変形はありませんが、橈骨神経の伝達が悪くなっています。
左前腕近位の「手三里」「曲池」の指圧ではおなかに動きがみられました。
これらのツボは大腸経ですか鼻の下の「人中」で交差して右小鼻の横の「迎香」で終わり、胃経に注いで右目の下「承泣」から右の腹部へ下がります。
腹部の指圧ではピンポイントで回盲部に痛みがありました。
全身指圧後、下がっていた下腹部のおなかポッコリが解消されて、脈は1分間に72に落ち着き、微熱は発散されて体全体が締まって見えます。
おなかを圧すと痛みはあるものの、来た時よりも痛みは薄らいだようです。
痛みが強くなるようなら病院への受診をすすめるとことろですが、今のところ下痢も出血もないので、連休中の仕事のストレスによる背部の緊張と腰痛に、内臓下垂の消化不良が加わったというくらいに考えておいてよいのではないでしょうか。
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