80代女性、主訴は肩の痛みで、寝ている時に「足の置場がない」という感じで目が覚めて眠れなくなるそうです。
この「足の置場がないという感覚」をどうとらえるかでセラピストのセンスが評価できます。
1月に膀胱炎になってまだ服薬治療中ということで、私には膀胱炎と「足の置場のない感覚」の関連性が診えてきました。
膀胱経の経絡は内眼角の「睛明」から頭頂部、後頭部を経て脊柱の両側を下り、下肢後側を下って第5趾爪根部外側に終わります。
膀胱炎になってからは体調が悪く、12月以来の指圧で、背中が丸くなり背部の筋肉が緊張しています。
左肩甲骨外側の小円筋を圧すと強い痛みがあります。
猫背で肩が体幹よりも前に出て内旋し、左肩はほとんど同じ姿勢のままストレッチされていないようです。
背部の緊張→交感神経優位→血管収縮・血行不良→膀胱炎が治りにくい、ということはあったと思います。
「足の置場のない感じ」は、背部の筋緊張による椎骨の間隔の短縮→坐骨神経の圧迫ということがベースにあります。
下腿後側の浅い部位=腓腹筋は使われておらず圧しても痛みはありません。ふくらはぎの表面はむくんでいます。
しかし、深部のヒラメ筋を圧すと強い痛みがありました。
これは座位が多く、腓腹筋を使うような膝をしっかりと伸展させて足を底屈させる動きはしていなかったということです。
そのかわりに膝軽度屈曲で立ち上がったり、歩いたりしていたのでヒラメ筋がよく使われていたということです。ヒラメ筋の支配神経は坐骨神経の延長の脛骨神経です。
特徴的だったのは大腿内転筋群の緊張を伴わない股関節を閉じた(両大腿内側を近づける)状態から開く時の動きの硬さです。
普通、老人性の歩行はO脚になって下肢外側が緊張します。
この女性も下肢外側の緊張はありました。
下肢外側の緊張があれば股関節外転が常なので普通は股関節が外に開きやすいのですが、「膀胱炎」で痛みや頻尿が続いていたので、骨盤底筋を等尺性収縮させて締める力が加わって、股関節内転のロックが長い間かかっていたようです。「オシッコをがまんする」時の骨盤底筋の緊張です。
全身指圧、股関節などのストレッチの後、体がかなり楽になったようです。
就寝してから1時間おきに目が覚めてトイレに行くとのことで、「日中の運動が少なく、年齢的に心臓の働きが弱くなってきているので、就寝姿勢で重力の影響が減ると末梢のむくみが還りやすくなって尿が作られる」ことをお話すると納得されたようです。
抗生物質の服用で一時は便秘になったということですが、今は便秘ではないとのこと、毎日ヨーグルトを食べているようなのでそれも良かったのでしょう。
疲れて免疫力が落ちて膀胱炎になる女性は指圧・マッサージに来る御客様にもたくさんいらっしゃいます。
しかし、膀胱炎と膀胱経の緊張を結びつけて考えるセラピストはなかなかいないのかなと思います。
このケースは高齢者でもあり、膀胱炎と膀胱経の関連が強くにおいましたが、若い方では背部の筋緊張はあっても坐骨神経症状はない場合が多いので見逃してしまうことが多いかもしれません。
治りにくい症状を改善するためのポイントは、見逃している体のロックをどれだけ見つけて解放するかということです。
高齢者の方にはゆっくりとわかりやすい言葉を選んで話をしてください。
安心をお土産に帰っていただくのがセラピーです。
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