童話

2006年12月 4日 (月)

ダンボールネズミ

 おばあさまからいただいたトマトには、ピンポン球くらいのかじりあとがありました。キッチンのお皿の周りには、黒い米粒くらいのネズミの糞が落ちています。きっとネズミがトマトと一緒におばあさまのレジ袋で運ばれてきたのです。

 これはたいへんと、ネズミ捕りの粘着シートを買ってきてしかけました。冷蔵庫のウラに潜んでいる気配がプンプンとします。

 翌朝、粘着シートにネズミがかかっていました。体長20cmのクマネズミでした。

その日はお盆でお寺へ行く朝でもあり、処分に困って雨の降る庭の片隅に放りだしておきました。お隣の猫かカラスでも来て、持っていってくれないだろうかと思いました。

ネズミは右半身を粘着シートに貼り付けたまま、切ない瞳でいつまでも逃れようと必死です。『でも君とは一緒に住めないよ…』

どうしたものかと思いながら、お寺の法要に出かけ、お塔婆をもらって帰ってみると、粘着シートのネズミは姿を消していました。

半身を厚紙の粘着シートで覆った“ダンボールネズミ”として、お向かいのトウモロコシ畑で生きていると思いたいのですが、ダンボールネズミはあの夏の日から私の心に住みついたのです。『でもいきなり君と会うのはごめんだな…』

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